第14話 大食い大会〜後編〜


 大食い大会IN葉月島葉月町葉月小学校体育館。

 個人の部は、当たり前のようにグレルが優勝した。
 なんと1人で30kgもの飲食物を胃に収めてダントツ優勝。

 グレルが(気持ち悪く)スキップしながらリュウたちのところへやってきて言う。

「あー、上手かった♪ もうちょっと食いたかったんだが、制限時間きちまったぜ、まったく」

「いやー、うん、師匠。あんた正真正銘のバケモノやね」

「なんだよ、リンク? そんなに褒めたって、ウン○しか出ねーぞっ♪ 食ったあとだし♪」

「褒めてへんわ!! 食欲減退するよーなこと言うなっ!!」

「がっはっはっ! オレの愛弟子たちは素直じゃねーなあ、ツンデレツンデレっと♪ さあ、今度はおまえらの番だぜ! しっかり頑張ってこいよーっと!」

 大食い個人部門に続き、今度はチーム部門の番がやってきた。
 出場するリュウとキラ、リンク、ミーナ、レオンのチーム名は、『チーム・匿名』。
 その名の通り、全員匿名。
 職業・秘密。
 葉月島の住人にはバレバレかもしれないが、全員サングラス着用。
 全部で13チームが横一列に並ぶ中、チーム・匿名は堂々中央を陣取った。

 大食い開始前、チーム1つずつがインタビューを受ける。
 リーダーであるリュウが適当にインタビューを終えたあと、リュウは他のチームに目を向けた。

「思ったより参加数多いな」

「ああ、多いな」キラが同意した。「しかも、ちゃーんと私の予想した人物たちがいる。チームを組んでくるとまでは読めなかったが……」

 と、キラが目を向けたのは左隣のチーム。
 チーム名を、『ちゃんこ』。

 キラが続ける。
「チーム『ちゃんこ』は、5人全員が過去個人の部優勝者だぞ」

「――!?」

 なんですと。
 一行は目を見開いて『ちゃんこ』のメンバーを見た。
 明らかに大食漢だろう姿の5人で結成されている。

「やっ、やばいやないかいっ!」リンクが隣のチームに聞こえないよう、小声で喚いた。「5人全員が個人の部優勝者って、どう頑張っても敵わないやんけっ!」

「いや、まだわかんねーよ」リュウも小声で口を開く。「早食いはできねーかもしれねーし」

「いや、それができるのだ」キラが言った。「でも、きっと大丈夫だ。奴ら5人の過去データは、私がこっそり調べておいた。奴らは大食いで早食いだが、それぞれ大きな欠点がある」

「そ、それは……!?」

 リュウとリンクがごくりと唾を飲み込んで訊いた。

 ふふふ、とキラが笑って続ける。

「恐らくあの並び方だと前菜を食べるだろうレイドンはトマトが苦手、メインディッシュを食べるだろうサンタは辛いものが苦手、同じくメインディッシュを食べるだろうジョニーは熱いものが苦手、そしてデザートを食べるだろうファミとマイケルは揃いも揃って冷たいものが苦手なのだ!」

「…そ、それがなんやねん?」

 リンクが訊いた。

 キラがまた、ふふふ、と笑って続ける。

「奴らは事前にメニューを聞いておかなかったのだろうな。本日の大食いメニューは、前菜がトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ、メインディッシュが熱々激辛カレーライス、デザートがチョコミントアイスクリームなのだ!」

「おおおおおっ!」

 リュウとリンク、ミーナ、レオンは声をあげた(小声で)。

「良かったぁ」と、レオンが笑った。「それだけ相手に欠点があるなら、僕がチーズ苦手でも大丈夫だよね?」

「あー、良かったわー」と、リンクが笑った。「それだけ苦手なもんあるなら、おれがカレーに入ってるニンジン食えなくても平気やな?」

「良かったぞー」と、ミーナが笑う。「それならわたしがミントアイス嫌いでも何とかなるな?」

 ………………。
 …………。
 ……。

 え?

「なっ…、なに!?」キラが驚倒した。「う、うちのチームにもそんなに苦手なものがあったのか!?」

「おっ…、おまえらっ」リュウも驚倒する。「今すぐその好き嫌い直しやがれっ!!」

 予想外のことに、急に狼狽し出すリュウ一行。
 だが、もう遅かった。

 司会者の声が響く。

「はーい、では、大食い大会5人組チーム部門を始めたいと思います♪」

 リュウ一行は顔を見合わせた。
   ごくりとリュウが唾を飲み込んで言う。

「いいか、おまえら。相手の欠点は5つに比べ、俺たちは3つだ。それを考えればマシだ。勝てる可能性はある。ていうか、優勝以外なんて、俺は取る気ねえ……!」

 ごくりと唾を飲み込み、キラ、リンク、ミーナ、レオンが頷いた。
 リュウが続ける。

「レオン、多少遅くなってもいいから、トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼを食いきれ! 男だろ!?」

「は、はいっ!」

「リンク、ニンジンは俺が食ってやるから、その分他の具を食え!」

「お、おう!」

「ミーナ、おまえはなるべくキラに負担をかけないよう、チョコを食いまくれ!」

「わ、わかったぞ!」

「そしてキラ……! 勝負好き、且つ、負けず嫌いの俺たちのプライドにかけて……頑張るぞ!!」

「イッ…、イエスっ、マイローーード!!」

 そして。
 大食い大会チームの部が始まった。
 前菜を食べるレオンが席につき、前菜が運ばれてくる。

(げっ)リュウ一行は目を丸くした。(お、多い……!!!)

 格メニューせいぜい3人前くらいだろうと思っていたリュウ一行だったが、その考えは甘かったようだった。
 軽く5、6人前の量だった。

   レオンが青い顔をして振り返る。

「ど、ど、どうしよう……」

「く、食えっ!」リュウは言う。「食うんだ、レオン! 遅くなってもいいから食え! 遅れた分は、俺が取り戻してやる……!」

「はっ、はいぃ……!」

 レオンが涙目になりながらも承諾し、いよいよ大食い大会チーム部門が始まった。

 トマトと一緒にモッツァレラチーズを口に入れて、レオンが悶える。

「もぐもぐっ…ぐぅぅっ……うっ……!!」

 司会者が言う。

「おおーっと、これはこれはどうしたことでしょう! 優勝候補の『ちゃんこ』と、ミステリアスな『チーム・匿名』が早々に苦戦しています!」

 リンクは他のチームを見渡した。
 『チーム・匿名』――リュウ一行と、『ちゃんこ』以外は順調に食べているようだった。

「あぁっ、もうっ…!」焦ったリンクは、キラを見た。「キッ、キラッ、いつもの(バカな)考えは浮かばんのかいっ! この際、何でもええから思いついてやっ!」

「ない! …というわけでは、ない」

「おおっ」リンクは声を期待に高くした。小声で訊く。「つまり、勝てる方法があるんやな!?」

「うむ、ある!」キラが小声ではっきりと答えた。「……が、正々堂々とした勝負たるもの、あまりこういうことはしたくないのだが……」

「お願いやからっ、お願いやからっ、キラ! 勝てる方法を!! ミーナのためにも!!」

「ミーナ…!」その名を口にしながら、キラの目が見開かれていく。「おお、そうだ、私はミーナのために、どんなことをしてでも勝たなければならないのだ! 可愛い可愛いミーナのために!!」

「そうやっ、そうやで、キラ!」

「よし、分かったぞ! リンク!」キラがリンクの肩に手を乗せた。「この大食い大会、何が何でも勝ちたいのだな!?」

「おう! 勝ちたいで!」

「何をしてでも、勝つ気でいるのだな!?」

「おう! 何をしてでも勝つで! なんせ、生活危ういからな!」

「よし、分かった! では、演技をしてくれ!」

「おう! 任せろいっ!」と、言ったあとに、リンクは眉を寄せた。「――って、なんやねん、演技って」

 一生懸命になってカプレーゼを食べるレオンの後方、キラがリュウとリンク、ミーナを引き寄せた。
 小声のまま続ける。

「良いか、リュウ、リンク、ミーナ。とりあえず、レオンが食べ終わるのを待とう」

 リュウ、リンク、ミーナが承諾して頷く。

「それで、だな。前菜のレオンが終わったら、メインディッシュのリュウとリンクだろう?」

 リュウ、リンク、ミーナが再び頷いた。

「そのときだ。そのときになったら、リンクは演技を頼む」

「だから」リンクは眉を寄せた。「演技って、何すんねん」

「ずばり!」

「ずばり……!?」

 リュウ、リンク、ミーナはごくりと唾を飲み込んだ。

 キラがにっこりと笑って言う。

「名づけて、『腹イタ演技』だ!」

「は?」リンクは再び眉を寄せた。「何やねん、それ。腹が痛いフリするってことか? そんなん、退場させられるだけちゃうん?」

「何を言っているのだ、リンク。よーく考えてみるのだっ♪」キラが笑顔で言う。「多くの人間は、『同情』をしてしまう心を持っているだろう? まあ、私たち人間に近いモンスターも同じことが言えるのだが。つまり、そこを考えると、だな。リンクが大袈裟に腹イタを演じれば演じるほど、出場者の人間たちは驚き戸惑い、リンクに『同情』をしてしまうが故に、食事をする手が思わず止まってしまうというものだっ♪ 良いか、大袈裟に、だぞ? 地味に演技したところで、人々の手を止めることはできない。しかも席からはずされ退場になるのがオチだ。あくまでも、大袈裟に、だ。そうすることによって、人々の手を止められるのだ。いいな? カメラもリンクに注目するだろうから、その間にリュウはメインディッシュを食べ進めてくれ。なるべく多く、特にリンクの苦手なニンジンを中心に。そして周りと差をつけたところで、リンクは自然に腹イタを治してくれ。いいか、なるべく自然にだぞ? あくまでも、自然にだぞ? 周りから演技だったとばれないよーにするのだぞ? そして、リンクも一緒にニンジンの無くなったメインディッシュを一気食いすれば完璧だ。なんせ生放送での大食いだし、撮り直しなんてしないだろうしなっ♪ メインディッシュを一番に食べ終えてくれれば、あとは私が余裕でデザート真っ先に完食だぞーっ♪ なーにっ、チョコミントアイスなど10人前は余裕だっ♪ あはははははは」

 キラの高らかな笑いが響き渡る。

 もしもし、キラさん。
 つまり、あなたは『同情』という人間や、人間に近いモンスターの弱みにつけこむわけですね。
 あなたは、大切な者のためなら悪魔になりますね。
 あなたは、大切な者のためなら何だってするのですね。
 そんな狡賢い人間が思いつくようなことが、どうやったらそんな純粋無垢な笑顔から出てくるのでしょう。
 あぁ、天然って恐ろしい……。

 思わず言葉を無くしているリンクに、キラが言う。

「どうした? リンク。やはり、あれか? そういった演技は難しいかっ? そうか、そうだよなっ? そうだと思って、良いものを用意しておいたぞっ」

 と、キラがポケットから出した物は。

「ほら、速効性のある下剤だ! これさえあれば、本物の演技ができるぞ、リンク! 1粒で緩やかな腹の痛み、2粒でなかなかの腹の痛み、3粒で激痛だ。というわけで、5粒飲め! そうすれば只ならぬ迫力で腹イタできるぞ!」

「ばっ、おま…………!? おれがトイレに駆け込んで食えなくなったら、意味あらへんやん!」

 しかも何だ、5粒って。
 それを飲んだと想像して、リンクは蒼白してしまう。

「バカだな、リンク」あはは、とキラが笑う。「リュウの治癒魔法があるではないかっ♪」

「そうだぜ、リンク」リュウが続いた。「俺がある程度食ったら、おまえの腹イタを治してやる。だからそれまで、便所行かずに腹イタやっててくれ」

「い、いや、ちょっと待っ――」

 待ってくれ!

 そんなリンクの言葉を遮るように、司会者の声が響いた。

「おおーっと! ここで『チーム・匿名』、やっとメインディッシュです!」

 レオンが最下位でようやく前菜を食べ終わった。
 キラに下剤5粒を容赦なく喉の奥に突っ込まれ、リンクはごくりと飲み込んだ。

「よし、リンク、食うぞ!」

 リュウによって席に座らせられ、リンクは出されたカレーライスをリュウと共に必死に口にかき込む。
 もう下剤は飲んでしまったし、仕方が無い。
 もう、やるしかない。
 もう、どうにでもなれ!
 リンクは演技の準備万端で、カレーライスを口にかき込んでいった。

 司会者が言う。

「おおーっと、ここで『チーム・匿名』追い上げムード来ました! すごい! すごい勢いでカレーライスをかき込んでおります!」

「…うっ……!?」リンクが腹を押さえた。「ううっ…ぐっ…きっ、きたきたきたあぁぁぁぁぁ……っっっ!!!」

 ぎゅるぎゅるごーーーーーーっ、ぎゅるるるるるるるっ………!!

 速効性があるとキラは言っていたが、いくらなんでもありすぎるだろう、これ!
 下剤を飲まされてからほんの1分じゃないか!
 しかも何だ、この尋常じゃない激痛は!!
 やっぱり天然バカ猫のキラなんかに頼るんじゃなかった!

 冷や汗をだらだら掻いて腹を抱えながら、リンクは椅子から立ち上がり、『チーム・匿名』のテーブルの前に飛び出した。

「ぐああああああああああああ!! いっ、痛いぃぃぃぃっ…!! 痛いで腹がああああああああああああああああああああああ!!!」

 リンクは悶えた。
 本気で悶えた。

 キラの予想通り、大食い参加者たちの手が止まる。

「お、おい!? 大丈夫か!?」

「た、大変だわ! 食あたりかしら!」

「き、君、大丈夫か!? おい!?」

 リュウとキラは目を合わせた。

(今だ!)

 同時に心の中で叫び、参加者や司会者、カメラマンがリンクに注目している間に、リュウはカレーライスを豪快に掻きこみ始めた。

(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!)

 マッハで食べて食べて食べまくる!
 カレーライスを食べまくる!
 特にニンジンを食べまくる!
 なるべく米と共に食べまくる!
 ていうか噛まずに飲みまくる!
 見事にニンジン抜きカレーに仕上げちまったぜ、オイ!
 優しいな、俺!

 一方のリンクは、演技ではない本気の腹の痛みに苦悶する。

「ぐっ、ぐおおおおおおおおおおっ!! ぐああああああああああああああああああああっ……!! 死ぬうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」リンクがたまらずと言ったように、リュウに手を伸ばす。「たっ…たすけ……!! リュ、リュウ…………!!」

 リンクがリュウに助けを求めてから数秒後、リュウはニンジンと共にカレーライスを半分以上平らげた。
 周りとの差もばっちりつけられた。

(よし、リンク、よくやった!)

 リュウは慌てたように立ち上がり、リンクに駆け寄った。

「おいっ!! リンク、大丈夫か!?」

 にやけそうになりながらリュウはリンクを腕に抱き、リンクと接した腕からリンクに治癒魔法を掛けてやる。
 腹の痛みが急に治まったが、急に楽になっては不自然。
 リンクは徐々に治って行く演技をしなければならない。

「ううううううっ…あああああっ……くっ………」

 司会者が駆け寄ってきて訊く。

「だ、大丈夫ですか!?」
「ぐううっ……はぁっ…はぁっ……ふ、ふぅ………。だ…、大丈夫ですわ。だんだん治まってきましたわ……」

「そ、そうですかっ…! 大丈夫なんですねっ?」

「は、はい……。もう大丈夫みたいですー、ご迷惑おかけしましたー…」

 リンクがぺこぺことカメラや司会者に向かって頭を下げ、再びリュウと共に席に着いた。

(おおっ!)リンクはカレー皿を見て目を丸くした。(みっ…、見事やっ! 見事やでっ、リュウ! なんと見事なニンジン抜きカレーや! しかも、もう半分以上食ってあんで……!)

 すっかり腹痛が治まったリンクは、リュウとキラ、ミーナ、レオンの顔を見た。
 きらーんと瞳を輝かせ、スプーンを握る。

「よし、この程度の量など……。おれに任せぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」

 リュウに続き、今度はリンクがカレーライスを掻き込む。

 マッハで食べて食べて食べまくる!
 ニンジン抜きカレーを食べまくる!
 美味い!
 美味いでニンジン抜きカレー!
 余裕のよっちゃん(古っ)ヒャッホーーーーイ!

 司会者が思わずといったように声をあげる。

「おおおおおおっ!? これはっ、これはどうしたことでしょう! 先ほどまで最下位だった『チーム・匿名』が一位に浮上しています! しかもつい先ほどまで腹痛で倒れていたとは思えない食べっぷりです! すごい! すごいです! あっという間に激辛カレーが無くなっていきます! 今、激辛カレーを………、一位で完食しましたーーーーーーーーー!!!」

「よっしゃあ! キラ、パスや!」

「おう!」

 リンクからバトンタッチを受け、キラとミーナが席に着く。
 背後でリュウ、レオンと声をあげる。

「よし、キラ! あとはおまえに任せたぞ!」

「がっ、頑張ってキラ!! ミーナも頑張るんだ!!」

 デザートであるチョコミントアイスクリームが大皿で運ばれてくる。
 スプーンを握り、キラはにやりと笑って言う。

「この勝負、もらったのだ!!」

 キラがチョコミントアイスクリームを口の中に掻き込み始めた。

 マッハで食べて食べて食べまくる!
 ……ん!?
 な、何だコレは……!?
 何だこのチョコミントアイスクリームは……!?
 爽やかな甘さのミント味と、パリッパリのチョコレートが絶妙にマッチングーっ!
 う、美味い!!
 美味すぎるぞーーーーーーーーーーーーっ!!
 あぁっ、ミーナ、チョコあんまり食べちゃダメエェェェェ!

 司会者の興奮の声が続く。

「デザートへとバットンタッチされた『チーム・匿名』! す、すごいです! ブラックキャットちゃん、すごいです! アイスクリームの冷たさなどまるで感じていません! すごい! これはすごい!! すごすぎる!! 何という速さでしょう!! 瞬く間に減って行きます!! すごいすごいすごいすごいすごーーーーーーーーーいっっっ!!! 有り得ません!! いえ、有り得てます!!! 私の目の前で有り得てます!!! あぁっ!!? 今っ、今アイスクリームが無くなろうとしています! 小柄なブラックキャットちゃんの身体に入れられようとしています! 今、最後の一口を笑顔で……完食しましたーーーーーーーーーっ!!! 『チーム・匿名』、ゴールイン!! 大逆転・優勝ーーーーーっっ!!!」

 リュウ一行は歓声と共に舞い上がった。
 
 
 
 
 大食い大会チームの部の優勝賞金は500万ゴールド。
 1人または1匹ずつ分けると、1人100万ゴールドずつ。

 はしゃぐ帰り道、キラは分け与えられた100万ゴールドをミーナに渡した。

「ほら、ミーナ」

「えっ…!?」

 ミーナが驚いて顔を上げると、そこにはキラの笑顔があった。

「それで好きなものを買うと良い」

「で、でもっ、グレル師匠だって50万ゴールド分けてくれたみたいだし、そ、それにっ、わたし結局ほとんど何もできなかったのにっ……!」

「良い。私はリュウが金持ちだから、それくらい渡しても何の苦にもならない。それに」と、キラがミーナの頭を撫でた。「おまえのために、それを取ったのだ。受け取ってくれるな?」

「…キラっ……!」

 ミーナの瞳に涙が浮かぶ。
 キラの優しさに。
 その愛情に。

 キラとミーナの会話を傍らで聞いていたリンクは苦笑した。

(あぁ…、改めて思うわ…。キラ、おまえミーナのためなら、本当何でもするんやな……。なんとゆーか……、場合によっては恐ろしいことになるんやろうなあ………)

 キラやミーナの速度に合わせて、のんびりと帰路を歩くリュウ一行。

 その遥か後方に、1つの胡乱な影があった――。
 
 
 
 
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