第121話 『12番バッター、行くべよ』 後編


 リーナはバスルームの方――ハナが立っている方に振り返って、目を丸くした。

「ハ、ハナちゃんっ…? どうしてここにっ……!」

 リーナの疑問には答えず、ハナは怖いくらいの真顔でもう一度訊く。

「リーナちゃん。本当に、その答えでいいんだべか?」

 リーナが「え?」と首を傾げると、ハナは続けた。

「リーナちゃんは、ジュリちゃんのことを好きだって言ったべ。でも、まだミカエル様がいてくれないと駄目だって言ったべ。それは今まで通り、ジュリちゃんとミカエル様の間をふらふらするってことだべ? それが答えなんだべ?」

 リーナが困惑したようにハナから顔を背けて言う。

「…せやかて…、せやかて、うち……」

 はっきり答えたわけではないが、リーナの様子から肯定したと判断したハナは、声を大きくして続けた。

「んだば、オラがジュリちゃんのこともらうべね!」

「えっ……?」

 とハナに顔を戻してグリーンの瞳を揺れ動かすリーナを見つめながら、ハナは願う。

(さあ、リーナちゃん。ジュリちゃんを選ぶだよ。ここでジュリちゃんを選ばなかったら、もう終わりだべよ? ジュリちゃんは、もう戻ってこないだよ? さあ、リーナちゃん……)

 ジュリを、選んで――

「ハナちゃん、バカちゃう?」

 そう言って、リーナが短く笑った。
 その言葉通り、表情通り、ハナを嘲笑していた。

 出来るもんならやってみろ。

 そんな顔をしている。
 リーナには自信があった。

(ジュリちゃんは、うちだけを見ていてくれる。ずっとずっと、死ぬまで……ううん、死んだって、うちだけを好きでいてくれる)

 そんな、絶対の自信が。

 だから、ジュリがハナに振り向くわけがない。
 ジュリがこのリーナを裏切るわけがない。

 ハナはただの、自惚れたバカ女――

「そっくりそのまま、お返しするべよ」

 そう真顔で答えたハナを見て、リーナはまた短く笑う。

「はいはい。ほな、うちちょっと用事あるからこれで」

 と背を向けて瞬間移動で去ろうとしたリーナの手を、ジュリが「あっ」と声を上げながら掴んだ。
 振り返ったリーナは、ジュリに笑いかける。

「好きやで、ジュリちゃん。うち、ジュリちゃんのこと、めっちゃ好きやで」

 それなら、行かないで。

 と、ジュリは願う。
 でもリーナは、ジュリの手を引き離して行ってしまう。

「せやけど、ごめんなジュリちゃん」

「リーナちゃん」

 行かないで。

「うち、もう行かなあかんから」

「リーナちゃんっ……!」

 行かないで。
 お願い。

「またデートに誘ってな」

「リーナちゃん!」

 行かないで。
 お願い。
 その『また』は、もうない。

「ほな、な」

「リーナちゃんっ!!」

 行かないで。
 行かないで。
 行かないで――

 だがその願い空しく、リーナの姿はジュリの目の前でふっと消えてしまった。
 その瞬間に決まってしまった。

(――2度目の、ばいばい)

 それは心のどこかでやって来ると確信していた。
 だからある程度の覚悟はしていた。
 それなのに、とてつもない悲しみに襲われて、1度目のあの時のように涙が溢れ出して止まらない。
 泣くまいと必死に堪えるのに、涙が次から次へと白い頬と食いしばった口の脇を零れ落ちて行く。

 ハナの視線を感じながらジュリは、あはは、と無理に声に出して笑う。

「相変わらずだね、僕。相変わらず、弱いや。男なのに、情けないや」

 そう言うジュリに、首を横に振ったハナ。
 ジュリの涙を指で拭った。

「ごめんだべ、ジュリちゃん。オラ、リーナちゃんを止めることが出来なかっただ。12番バッター、失敗になってしまっただ。ごめんだべ、ジュリちゃん。ごめんだべ……」

 ハナは「でも」と続ける。

「これからは、オラがいるだよ。これからは、オラがずっとずっと、ジュリちゃんのこと笑顔でいさせてみせるだよ……」

 髪を1つに縛っていたゴムを外し、着ていたシャツワンピのボタンを外す。
 ハナの足元に、すとんとそれが落ちた。

 白いシンプルな下着姿になったハナを見つめ、ジュリが首を傾げる。

「ハナちゃ……?」

「オラは地味で、物凄くモテた時期なんてないけんども、まったく男の人を知らないわけじゃないだよ」

 そう言ってはにかみ、ハナがすぐ傍にあったソファーにジュリを座らせて抱きしめる。

 その腕はとても優しくて、温かくて、必死に涙を止めようとしていたジュリの気を緩ませた。
 その途端、涙は止まるどころか尚のこと溢れ出てきて、ジュリはハナの胸にしがみ付き、声を上げて泣き出した。

「よしよし、ジュリちゃん。リーナちゃんのこと、オラがすぐに忘れさせてあげるだよ。明日の朝には、笑顔にさせてみせるだよ……」

 ソファーの上にそっとジュリを寝かせて、ハナはその濡れた瞼や頬にキスをする。
 ジュリの衣類を脱がして行きながら、優しく唇を重ねる。

 ジュリはハナがこれからどんなことをするのか、あまりよく分からない。
 でも、この悲しみで張り裂けそうな胸を癒してくれるような気がして、されるがままになって身を任せる。
 ハナのその愛情に、甘える。

(ばいばい……)

 頭の中、ジュリは告げる。
 物心ついたときから、いつも頭の中で輝いていた真夏の太陽のような笑顔に、別れを告げる。

(ばいばい、リーナちゃん。ずっとずっと大好きだった、リーナちゃん。ばいばい…、ばいばい…、ばいばい……)

 ばいばい……――
 
 
 
 
(ジュリちゃんは、ずっとずっと、うちを想っていてくれる。せやから、ジュリちゃんは大丈夫。うちが心配せなあかんのは、こっちの方……)

 瞬間移動でヒマワリ城へとやって来たリーナは、こっち――ミカエルを見て小さく溜め息を吐いた。

 自室のベッドに座ってリーナを待っていたミカエルが、リーナが姿を現すなり立ち上がって作り笑顔を向ける。

「来てくれてありがとう、リーナ。待っていたぞ」

 とミカエルが言い終わるか終らないかのうちに、リーナは口を開いた。

「うちに少しの時間で済む話って、なんや?」

「その前に、立って話すのも何だからとりあえずソファーに座っ――」

「嫌やで」

 と少し震えた声で遮ったリーナの顔を見て、ミカエルは「え?」と首を傾げた。
 こちらを睨むように見つめている。

「ユナちゃんにミカエルさまを取られるなんて――ミカエルさまがうちの傍からいなくなってしまうなんて、絶対に嫌やで! 絶対に、許さへんで!」

 そう声を上げて胸にしがみ付いてきたリーナから、ミカエルは困惑して顔を逸らす。

「リーナ、私は――」

「好きやもん! うち、ミカエルさまのこと、好きやもん!」

 そんなリーナの言葉を聞いたミカエル。
 ふ、と短く笑った。

「私のことを、好き……だって?」

「せやで! うち、ミカエルさまのこと、好きなんやで! せやから、うちの傍におってや! また、うちと付き合ってや! な、ミカエルさま? なっ……!?」

「そうか……、リーナは私のことが好きなのか」

「せやで! うちはミカエルさまのことが――」

 その言葉を遮るように、ミカエルがリーナを押し倒した。

 驚いて「わっ」と声を上げながら、ふかふかのキングサイズベッドの上に倒れたリーナ。
 両手がミカエルに押さえ付けられて、動くことが出来ない。

「じゃあ、いいよな? 私がおまえを抱いても」

 そう言いながら、また短く笑ったミカエル。
 リーナの返答を聞かずに、強引にリーナの首に口付け、今日ジュリとのデートのために着てきた可愛らしいミニワンピのファスナーを降ろしていく。

「えっ…!? あっ、ちょっ……ミ、ミカエルさま、あの――」

 待って。

 と言おうとしたリーナは、ふと思い直して言葉を切った。

 そうだ、これでいい。
 こうすればきっと、ミカエルはユナのところへ行かないでくれる。
 このリーナの傍にいてくれる。

(せや、これでいいんや……)

 後悔なんてしない。
 ワンピースを脱がされて露になった、レースの施されたピンク色の可憐な下着は、ジュリに見せるためのものだったけれど。

(これでいいんや、これで…これで……)

 そう、これでいい。
 これでいいのだ。
 これで……。

 そう、思ったのに。
 ミカエルに下着をも脱がされかけたとき、リーナの口から漏れた名は別の男のものだった。

「好きやで……好きやで…っ……、…ジュリちゃんっ……」

 その言葉に驚いたのは、他の誰でもないリーナ自身。
 ふと手を止めたミカエルの顔を見つめながら、口を両手で押さえる。

(――うち、今…、誰を呼んだ……!?)

 ああ、どうしよう。
 己はとんでもない失言をしてしまった。

 ああ、どうしよう。
 己はミカエルに、何て言えばいいのだろう。

 ああ、どうしよう。
 己はどこまでも、最低の女だ――

 困惑し、狼狽し、胸に酷く心地悪い動悸を感じながら、リーナはグリーンの瞳を揺れ動かす。

 それを黙って見つめていたミカエルが、ふと微笑んだ。

「やっぱりな。リーナ、おまえが恋するのは私ではない……ジュリだ」

「え……?」

「2人で仕事をしているとき、おまえは私を想っているようで、離れたところにいるジュリをずっと想っていた。おまえが私に対して持っていたのは恋じゃなく、単なる甘えだ。リーナおまえは、ずっと私に甘えているだけだったんだ」

「…ミ…ミカエルさま、うちっ……!」

「大丈夫だ、リーナ。大丈夫……ジュリはもう、おまえを傷つけるようなことはしない。私に負けないくらい……いや、私以上に大人になったかもしれない。もう怯えなくて大丈夫だ、リーナ……」

 そう優しい声で語りかけ、優しい微笑でリーナを見つめ、優しい手でリーナの頭を撫でるミカエル。

「私から、巣立つんだ」

 そう言い放った声はやっぱり優しかったけれど、内から漂うのは王子の風格だった。
 リーナに服を着せ、手を引いて立ち上がらせる。

「さあ……行け、リーナ。ジュリが待っているぞ」

 そう言って微笑んでくれるミカエルに、リーナはしがみ付いた。

 まだ傍にいてと、すがるのではない。
 もう傍にいてはいけないのだと、強く思った。

 故に込み上げてくる寂しさが、ミカエルのその優しさが、己の犯した罪の意識が、とても苦しくて涙が溢れ出てくる。

「ミカエルさま、ミカエルさま……! 忘れんといて……うち、うち、ミカエルさまのことを好きやったのは嘘やない。恋やなかったとしても、支えてくれたミカエルさまのことが、めっちゃめっちゃ好きやった。好きやった、好きやった……大好きやった!」

「そうか……ありがとな」

 ミカエルは、リーナを――心から愛した女を、ぎゅっと抱き締める。
 まったく名残惜しくないと言ったら嘘になる。

 でも、もうこれで終わりだ。

 己はこれから、新たに愛した女を――ユナを、抱き締めにいく。

(さようなら、リーナ。さようなら……愛した人――)

 ミカエルがそっと腕を離すと、リーナはその場からふっと消えていった。

 リーナが立っていた場所を少しの間見つめたあと、ミカエルは深呼吸をした。
 舞踏会の時間がやって来た。

 さあ、己も行こう。

(待っていてくれる、ユナの――愛しい女性のところへ……!)

 と自室から飛び出したミカエルに、廊下にいた警備兵の声が掛かった。

「あの、ミカエル王子!」

「なんだ? 舞踏会が始まるから、急いでいるんだが」

「申し訳ございません。しかし、先ほどユナさんがここへいらして……」

「ユナが?」

「部屋の中の会話を聞いたのか、黒猫の耳をぴくぴくとさせたあと、とても悲しそうな顔をしてどこかへ行ってしまわれました」

「――え?」

 ミカエルは警備兵にユナが向かって行った方向を聞くと、狼狽しながらそちらへと駆けて行った。
 とても悲しそうな顔をしていたということは、ユナがこのミカエルとリーナのどの辺りの会話を聞いてしまったのか察する。

 ユナが向かって行った方向は舞踏会が始まったダンスホールのある方で、ミカエルはその中で楽しげに踊っている招待客の中からユナの姿を必死に探した。
 すると、ダンスを楽しんでいるシオンとローゼ、舞踏会全体の警護に来ているシュウ、そしてリュウの姿が目に入って思わずギクッとしてしまったミカエルだが、どうやらリュウは腕の中にいる妻――キラに恍惚として、ミカエルの姿に気付いていないらしい。

 ふとミカエルと目が合ったキラが、知らせてくれる。
 目配せをして、ユナの居場所を。

 ユナは、ダンスホールの外に作られた階段――2階から1階へと続く階段の、真ん中のところに立っていた。
 壁際で、一人泣きじゃくっている。

「ユナ!」

 と名を呼んでミカエルが階段を駆け下りて行くと、ユナも逃げるように階段を駆け下りようとした。
 だが、ドレスの裾を踏んで転びかけたところを、ミカエルの腕に支えられて捕まる。

「何を泣いているんだ、ユナ!」

「ミカエルさま、リーナのこと抱いてたあぁぁぁっ」

「だ、抱いていないぞ!」

「でも、抱こうとしてた! そんなことをリーナに言ってたの聞いたもん! リーナのこと押し倒したのだって、ドア越しにだけど分かったもん!」

「ど、どうせ盗み聞きするなら最後までしてくれ、最後まで! ――って、それはおかしいか……」

 と苦笑するミカエルの腕から抜け出し、逃げようとするユナを、ミカエルは再び腕に抱く。

「あれは演技だ、ユナ! リーナに自分自身の気持ちを分からせるための、演技に過ぎない! 案の定、リーナは私の腕の中でジュリを呼び、抵抗した形になった! そして私は、ちゃんとリーナと別れてきた! 大体、私は相手の許可もなしに抱くような男ではないぞ! そんな、リュウじゃあるまいし!」

「でも、そこでリーナが抵抗しなかったらどうしてたの!?」

「それはっ…! …う、うーん……、今になってみれば恐ろしいことをしたな、私は……」

 と、少々蒼白しながら顔を引きつらせたミカエル。
 泣き喚いて、また逃げようとしたユナを、必死に腕に掻き抱いた。

「好きだ、ユナ! 好きだ! 私は、おまえが好きだ! だから、行かないでくれ……!」

 そう声を詰まらせたミカエルの言葉を聞き、ユナがふとおとなしくなった。
 ミカエルの顔を見上げて、たしかめる。

「本当に…? 本当にあたしのこと…好きっ……?」

「好きだ」

「嘘じゃなくてっ……?」

「好きだ」

「後から、やっぱりリーナが好きだ、なんて言ったらパパにお仕置きしてもらっちゃうからねっ……?」

「それは恐ろしいな。三途の川を渡らされる」

 と、笑ったミカエル。
 頬を染め、その淡い紫色の瞳を潤ませ、じっと見つめてくるユナに顔を近づけて「でも」と続けた。

「そんな心配は、ない……」とユナの唇に、唇を重ねた後、はっとしたように一度離して、ミカエルがまた笑う。「――って、今のでリュウに100発ぶっ飛ばされてしまうな」

「怖い?」

「まあな。でも私は、その程度では懲りないらしい」

 そう言ってミカエルは、腕を伸ばして首にしがみ付いてきたユナに唇を重ねる。
 リュウに100発ぶっ飛ばされようが200発ぶっ飛ばされようが、700発ぶっ飛ばされようが800発ぶっ飛ばされようが、己の中の沸き立つ感情を止められそうになかった。
 バランスを崩して階段から落ちぬよう、片手を傍らの壁に付いて身体を支えながらも、もう片腕で一段下に立っているユナの腰を抱いて、抱き上げて、唇を奪う。
 堰を切ったように、奪い合う。

 交じり合う熱い呼気。
 ユナの猫耳にはもちろん、ミカエルの耳にも響くお互いの波打つ鼓動。
 ダンスホールから聞えてくる優雅な音楽も、賑わっている招待客の声も、耳から遠のいていく。

(――ああ…、まずいな…まずい……)

 このままじゃ理性までもがどこかへ行ってしまいそうで、ミカエルはやっと思いで唇を離す。
 ユナの足を、そっとまた一段下の階段に降ろす。

「ミカエルさまっ……?」

 と、物欲しそうな顔をして覗き込んでくるユナの乱れたリップを指で拭い、ミカエルはにこっと笑って言う。

「さて、踊るかユナ」

「え…? あの……」

 と、ユナが俯いた。
 小さく首を横に振って、続ける。

「えと…、泣いてお化粧崩れちゃったし、リップも乱れちゃったから、もう舞踏会には出ない……」

「大丈夫だ、城の者に言えば化粧道具くらい貸してくれる」

「い…いい、貸してくれなくて……」

「なんだ、遠慮しなくていいぞ?」

「え、遠慮じゃなくてっ……!」

 では何だと首を傾げるミカエルの顔を見上げ、ユナは顔を真っ赤にしながら声を上げた。

「リーナのことは押し倒したくせに、どうしてあたしにはキスだけなのっ……!?」

「え?」

「あたっ…あたしだけその気になって、バカみたいっ……!」

 と、恥ずかしそうに目に涙を溜めながら、今度はダンスホールの方へと向かって階段を駆け上がろうとしたユナを、ミカエルはすっと腕を伸ばして制止する。

「わ、悪かった、ユナ。しかし、こんなところじゃ……。どうするんだ、ダンスホールから誰か出てきたら」

「今日はパパだけじゃなくママも来てるから、みんな見惚れて外になんて出てこないもん!」

「たしかにその可能性は非常に高いが、ドレスだって汚れてしまうだろう」

「そんなのいい!」

「良くないだろう。見たことのないドレスだ。今日のために買って来たんじゃないのか?」

「そうだけどっ……!」

 と、また俯いたユナ。
 一呼吸置いて、続けた。

「……あたしのこと、結構軽い女なんだって、思う? 両想いになったのはついさっきのことなのにって、思う? そんなに急がなくてもいいだろうって、思う?」

 口を開こうとしたミカエルよりも先に、ユナが「でも」と続ける。

「あたしは、ずっとずっと前から、ミカエルさまのこと好きだったんだもん! ミカエルさまのこと、ずっとずっと前から、待ってたんだもん! もうとっくの昔から、夢見てたんだもん! だからっ……!」

 愛しい女にそこまで言われて理性を保てるほど、ミカエルとて忍耐強くはない。
 着ていたロングジャケットを脱ぎ、ユナの身体を隠すように羽織らせて笑った。

「どうやら私は、リュウに100万発殴られたいらしい」

 抱擁し合ったミカエルとユナの唇が、再び重なる。
 そしてミカエルのロングジャケットの中、ユナのドレスの背中のホックが外されていった。
 
 
 
 
 一方、ジュリがいる高級ホテルのスィートルームへと、再び瞬間移動でやって来たリーナ。
 ジュリのその胸に飛び込む気で戻って来たが、辿り着いた戸口で呆然と立ち尽くしていた。

(――何が…起きとんねん……?)
 
 
 
 
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