第106話 身体測定 女編


 ギルド長室の中、これから身体測定を行う女たちの中に男――リュウが一人。
 目にも留まらぬ早業でキラを下着姿にし、それはもう嬉々としてキラの身体測定を行う。

「俺の可愛い黒猫は今までと変わらず、身長155p・体重40kg・体脂肪率14.5%・座高79p!」

「リュ、リュウ、止め――」

「そしてバスト87! 細かく言うとアンダー64のF!」

「こ、こら――」

「ウエスト55!」

「お、おい――」

「ヒップ82!」

 とスリーサイズをはかり終わったところで、部屋の外から聞こえて来たチビリュウ3匹の「おおーっ!」という感嘆の声。
 それから察するに、どうやらドアに張り付いて聞いているらしい。

「ああ、エロいぜ俺の可愛い黒猫。特にこの乳のデカさがたまらん。どっかの貧乳女に見習わせた――」

 ズバババババッ!!

 とマシンガンの弾丸30発をリュウに向けてぶっ放したカレン。
 片手で全て弾丸を受け止めたリュウに向かって、顔を真っ赤にして声を上げる。

「お義母さまの身体測定が終わったのなら、さっさと外に出ていてくださいなお義父さま!!」

「分かったよ、うるせーな。ったく貧乳の上にヒステリーか――」

 ズバババババッ!!

 と再びカレンが、マシンガンの弾丸30発をリュウに向けてぶっ放し部屋の外に追い出したら。
 いざ、女ハンター&成長期の女の子たちの身体測定の始まりである。

「んだば、皆適当に並ぶだよー。身長をキラ様が、体重・体脂肪率をミーナさんが、座高・スリーサイズをオラがはかるべね」

 と言ったハナに、キラが苦笑しながら「いや」と口を挟んだ。

「私が身長をはかるだけで良い。あとは皆自分で何とかするのだ……」

「自分で何とかする? ……って、ああーっ、体重とか座高とかスリーサイズとか、他人に知られるのは恥ずかしいからですだね、女の子だし! 分かったべ、オラ背ぇ向けてっから、その間に皆はかってけろー」

 とくるりと一同に背を向けたハナに、サラの声。

「いやー、そんなことしなくていいよハナちゃん。お茶でも飲んでてー」

「え?」

 と首を傾げながら振り返ったハナは、眉を寄せた。
 サラが片手にペンを持ち、はかりもせずに自分の測定結果を書く紙に何か書いている。

「自分の身体のことなんて知ってるしねー。えーと、去年と同じでウエスト1cmサバ読んじゃえー。イェーイ! サラちゃんボンッ、キュッ、ボーン♪」

 しかもそれは、サラの隣にいるカレンも。

「あたくしは去年、バスト88って書いたのよね。じゃあ、今年は90cmでいいわよね♪」

 その隣にいるリン・ランも。

「うーむ、今年はどうしようかラン? 去年はカレンちゃん並のバストサイズを書いてみたが、兄上は無反応だったぞ」

「うーむ、今年はどうしようかリン? そうだ、兄上はカレンちゃんのように少しポチャッとしてるのが好きなのかもしれないぞ。だからカレンちゃん並の体脂肪率を書こうぞ」

 さらにその隣にいるユナも。

「もー、サラ姉ちゃんがウエスト1cmサバ読むなら、あたしもそうしなきゃじゃーん! サラ姉ちゃんより身長低いのにウエストは一緒なんて嫌だもんっ」

 その上さらにその隣のリーナも。

「キ、キラ姉ちゃんの娘のあんたらはサバ読みなんかいらへんやないかいっ! うちもバスト3cm増しや!」

 まだ小さいカノン・カリンも。

「今年はどうちようかちらね、カリン?」

「今年も同じよ、カノン。おじーちゃまは、おばーちゃまのようなスタイルが好きなのだから」

「そうね。今年もあたくちたちは、上から87・55・82ね」

 おまけに、今年から身体測定を共にすることになったローゼまで。

「なんっっっで、シオンはあんなに座高が低いのにゃあぁぁぁっ! ローゼの方が少し小さいのに、ローゼの方が胴長なんて嫌にゃっ! シオンの座高は81pだから、ローゼの座高は80pっ!」

 そんな女たちを見回し、顔を引きつらせたハナ。
 次の瞬間、その怒声がギルド長室の外まで響き渡って行った。

「そんなことしたら駄目だべよ!! 嘘の測定結果なんて、リュウ様に出せねえだ!! 身長、体重・体脂肪率、座高、スリーサイズ、ぜぇぇぇぇぇぇんぶオラがはかるから今すぐ並ぶだ!!」

「えーっ!?」

 と不満の声をあげた女たちであるが、相手は葉月島本土生まれのブラックキャットよりも強い、離島生まれのブラックキャットであるハナ。
 しかも年齢は71歳。
 何もしなくても年々強くなる純モンスターのその力ときたら、それはもう凄いもので。

 超一流ハンター歴6年目に突入したサラでさえ、ずるずると引っ張られていく。

「うっわぁぁぁ、ハナちゃん怪力ーっ!」

「ほら、さっさとはかるだよサラちゃん! 身長169cm、体重48kg・体脂肪率14%、座高84cm――って、脚長っ!!」

「まぁねー♪」

「スリーサイズは、上から85のE・58・86! まったくもう! サバ読む必要なんてドコにあるだよ、サラちゃん!?」

「えー? ウェスト1cm細くしてよ、ハナちゃーん。部屋の外に出てたって、きっとレオ兄の猫耳には聞こえてるからぁ」

「駄目だべ! 次、リンちゃん・ランちゃん!」

 と、次の番は双子のリン・ラン。
 といっても測定結果は毎年1mmもズレることはないので、時間短縮のため片方――リンだけで済ませる。

「身長165p、体重47kg・体脂肪率15%、座高84cm!」

「た、体脂肪率をもっと増やしてくださいなのだっ! カレンちゃん並にポッチャリしないと、兄上に振り向いてもらえませんなのだっ!」

「そんな明らかに5%以上もサバ読めないだよ!」

 なんてキッパリと言われてカレンが顔を引きつらせる中、ハナがリンのスリーサイズをはかる。

「上から83のD・58・85! 次、ユナちゃん!」

 と、次はユナの番。
 そっくりな三つ子の一番上の子であるユナは、リン・ラン同様に真ん中の子・マナや一番下の子レナとまったく同じサイズである。
 女として少しでもスタイルが良い測定結果を求めたいところだが、このハナの様子からすると無理そうなので、まな板の鯉状態で測定される。

「身長162cm、体重46kg・体脂肪率15%、座高83cm。スリーサイズは上から83のD・57・84だべね、ユナちゃん。うーん、おとなしくていい子だべー♪」

「あ…あはは…、諦めただけだよ……」

 と苦笑するユナを見、

「ていうか、キラ姉ちゃんたちの娘のあんたらはサバ読む必要ないやろ!?」

 と突っ込んだリーナが次の番。
 身体のサイズは、瓜二つの母・ミーナと同じである。

「ほな、はかるべよリーナちゃん」

「あぁぁ、ちょいとオマケしてーなハナちゃーん! ジュリちゃんの猫耳にも聞こえとるんやからあぁぁ!」

「ジタバタしてないで観念するだよ、リーナちゃん! 身長155cm、体重40kg・体脂肪率16%、座高80cm! 次はスリーサイズ!」

「乳おまけしてや、乳! う、うち、ヒロインなんやからああぁぁああぁぁあぁぁあーーーっ!!」

「そんなのオラには関係ないだ! 上から80のC・57・82! なーんだ、普通にスタイル良い方だべよリーナちゃん?」

「キラ姉ちゃんたちと比べると劣んねん! ああもうっ、ジュリちゃん今の聞かんかったことにしといてぇーーーーっ!?」

 とリーナがドアの外に向かって絶叫すると、「わ、分かった」と聞こえて来たジュリの声。
 それを聞いてリーナが少し安堵したところで、次はカノン・カリンの番。
 彼女たちも毎年測定結果は同じなので、カノンだけで測定を済ませる。

「ほ、本当のケッカをおじーちゃまにお知らせするのかちら、ハナちゃま?」

「もちろんだべよ」

「じゃ、じゃあ、あたくちたちはスリーサイズはいらないわよねっ? だ、だって、まだ子供でちゅものっ!」

「まあ、そうだべね。スリーサイズは必要ないべね」

「ああ、よかった……。ハジをかくところでちたわ」

 と安堵の溜め息を吐き、カノンはおとなしくハナに身長と体重・体脂肪率、座高だけをはかられる。
 顔だけではなく身体も祖母・キラに似たのか、または母・カレンに似たのか、同年齢の子供たちの平均よりも小さい。

「身長119cm、体重20kg・体脂肪率17%、座高61cm。同じ7歳の子……いや、カノンちゃん・カリンちゃんは来月が誕生日だし、約8歳だべね。う、うーん…、同じ8歳の子の平均よりもずいぶん小さいけんども、大丈夫だべか……」

「だいじょーぶでちゅわ、ハナちゃま。あたくちたち、モンスターのクォーターでちゅもの」

「それもそうだべね。うーん、可愛いだねー、カノンちゃん・カリンちゃんー♪ んだば次は……」

 とハナが次の順番であるローゼに顔を向けると、何やらドアの方を気にした様子でそわそわとしている。

「ハ、ハナさん、お、お願いがありますにゃっ……! シ、シオンがドアに張り付いて聞いてるから、ロ、ローゼの測定結果を――」

「サバ読まないだよ、王女様」

「よ、読んでくださいにゃっ! これは王女命令ですにゃっ!」

「オラは王女様の命令より、リュウ様に真の測定結果を渡すことの方が大切ですだ! ほら、まずは早く身長計に乗ってくださいだ!」

 とハナの怪力に引っ張られ、ローゼの泣き声が響く。

「ふにゃああぁぁああぁぁあんっ! シオンよりローゼの方が胴長なんて嫌にゃああぁぁああああぁぁああぁぁぁあっ!」

 すると、ドアの外からシオンの声。

「大丈夫だ、ローゼ。別におまえ短足じゃねーだろ。それに俺が気になってんのはそこじゃねえ」

「にゃ……?」

「乳だ」

「――!?」ローゼ、周章狼狽。「ふにゃーーーっ! ふにゃーーーっ! ふにゃーーーっ! ハ、ハハハ、ハナさん、ローゼのバストを――」

「サバ読まないですだ!!」

 と、再びきっぱりと断ったハナ。
 容赦なくローゼの身体をはかっていく。

「身長160.5cm、体重46kg・体脂肪率18%、座高82.5cm! スリーサイズは、上から80のC・58・83!」

「おおーっ!」と、歓喜の声を上げたのはドアの外にいるシオンである。「Cになったか、Cに! よしよし、順調に育ってるな」

 一方のローゼも頬を染めて喜ぶ。

「ふにゃあぁぁあん♪ あとで新しい下着買いに行くのにゃあぁぁああぁあんっ♪」

 そして残りは、カレンだけなのだが。
 その姿が見当たらなく、女たちが「あれ?」と首を傾げて探すと、それはギルド長のデスクの下に。

「何してるだよ、カレンちゃん……」

 と苦笑したハナに、カレンはそれはもう必死な様子で言う。

「ハ、ハナちゃん、お願いよ! あたっ、あたくしの測定結果だけは、サバ読ませてほしいのですわっ! と、特にバストを!」

「観念するだよ、カレンちゃん……」

「そ、そうだわ取引をしましょう、ハナちゃん! あ、あとでお義父さまの使用済みパンツをプレゼントするわ! こ、これでどう!?」

「オラは変態じゃないべよ、カレンちゃん……」

「あ、ああそうね、悪かったわゴメンナサイ怒らないでハナちゃん! じゃあ――」

 と言葉を切ったカレン。
 ハナに机の中から引きずり出され、絶叫する。

「きっ、きゃああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああーーーっっっ!!」

 しかもマシンガン乱射。

 ズバババッ!

 デスク破壊。

「やめてぇえええぇぇええぇぇえぇぇえーーーっっっ!!」

 ズババババッ!

 窓粉砕。

「いやあぁぁああぁぁああぁぁぁあああーーーっっっ!!」

 ズバババババッ!

 ソファーはボロボロ。

「はからないでぇええぇぇええぇぇええーーーっっっ!!」

 ズババババババッ!

 ドアは蜂の巣。

「お願いよおおぉぉぉぉぉぉおぉおぉおーーーっっっ!!」

 ズバババババババッ!

 おまけに女たちに弾丸が当たりそうになり、悲鳴が響き渡る。

「お、落ち着くんだハニィィィィィィィィィっ!!」

 と慌ててシュウが入ってきたが、女たちは皆下着姿で。

「ぎゃああぁああぁあっ! 覗くな、どあほぉぉぉぉぉぉぉう!!」

 リーナに椅子をぶん投げられ、

「兄ちゃんのエッチィィィィィィィィィィィ!!」

 ユナにはデスクをぶん投げられ。
 再び部屋の外に吹っ飛ばされたシュウは、そこから必死に叫ぶ。

「お、おおお、落ち着くんだハニィィィィィーーーっ!! マジ超可愛いぜ、貧乳っ! オレは大好きだぜ、貧乳っ! ひ・ん・にゅー♪ ひ・ん・にゅー♪ L・O・V・E、ひ・ん・にゅーーーっ♪ いよっ、ハニー貧乳世界一っ!」

 なんて焦って必死にフォローしたが、禁句連発のそれは当然逆効果である。

「ぬわんっっっっですってアナタァァァァァァァァァァァァァァァーーーっっっ!!?」

 ズガァァァァァァァン!

 とカレンが部屋の外のシュウに向かってバズーカ発射。
 超一流ハンターのシュウは軽傷で済んだが、ギルドは壊れかけ。

 溜め息を吐いたリュウが口を開く。

「キラ、ハナ。その貧乳を今すぐおとなしくさせろ」

 とまた禁句を言ったリュウに向かってカレンがバズーカをぶっ放す前に、キラがそれを取り上げ。
 ハナがマシンガンを取り上げ。

「えっ!? えっ、えっ、えっ…!? ちょ、待っ……!」

 と、目の前の2人の顔を交互に見つめながら、後ずさったカレンだが。
 ずるずると引っ張られ、強制的な身体測定が始まった。

「いやあああっ! やめてくださいな、お義母さまハナちゃぁああぁぁああぁぁああぁぁああんっ!!」

「私がカレンを押さえつけているから、その間にはかれハナ」

「はいですだ、キラ様。カレンちゃんは身長は152cm、体重43kg・体脂肪率21%、座高80cm。そしてスリーサイズは上から――」

「きゃーーーっ!!」

 とカレンに言葉を遮られ、ハナの顔が引きつる。

「スリーサイズは上から――」

「きゃーーーっ!!」

「上から――」

「きゃーーーっ!!」

「上か――」

「きゃーーーっ!!」

「上――」

「きゃーーーっ!!」

「う――」

「きゃーーーっ!!」

「……」

 ブチッと己の中で何かが切れる音がしたハナ。
 それはもう廊下にも、割れた窓の外にも聞こえる大きな声でカレンのスリーサイズを読み上げた。

「上から75のA・60・83ですだっっっ!!」

 その瞬間外まで響き渡った、この世の終わりでも来たのではないかと思うようなカレンの絶叫。
 それを聞きながら、「ぷっ」と吹き出したリュウ&シオン、セナ。

「マジすっげー貧乳」

 と言った次の瞬間カレンが再びバズーカを手にし、ギルド半壊。
 それを見、あたふたとするハナ。

「あわわわわ! く、崩れるだあぁぁぁ! は、早く皆外に出るだよ!」

 と部屋から出ようとしたが、ぐいっと複数の手に引っ張られ。
 何なのかと振り返ると、そこにはハナにより身体測定をさせられた女たちの恐ろしいほどの満面の笑み。

「えっ…!? あ、あの、皆、どうしたんだべ…!? えっ、ちょ、まさか、オラの測定も……!?」

 YES。

「ひ、ひえぇぇぇーっ! か、堪忍してくださいだぁぁぁぁっ! オラ、皆と違ってスタイル悪いですだぁぁぁぁぁぁっ!!」

 なんて懇願したところで、許してもらえるわけがなく。
 キラに押さえつけられたハナは、身長158cm、体重46kg・体脂肪率19%、座高85p。
 スリーサイズは上から78のB・62・84という正直な測定結果を大声で読まれたのであった。

「ご、ごごご、ごめんなさいでしただぁぁああぁぁああぁぁああーーーっ!!」
 
 
 
 
 おまけ。
 一人留守番をしているミラより。

「読者の皆様、こんにちは。またはおはようございます、もしくはこんばんは。私は身長160cm、体重45kg・体脂肪率16%、座高81cmです♪ 気になるスリーサイズは、上から88のF・56・85です♪」

 なんて言っているが、実際のスリーサイズは上から82.5のD・57・84だ。

「あんもう、バラしちゃイヤん」

 以上。
 身体測定・女偏でした。
 
 
 
 
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