第82話 主人公のお宅にお邪魔します


 葉月町にあるドールショップの外。
 カレンはリュウに電話していた。

「もしもし、リュウさま? お忙しいところごめんなさい」

「おう、カレン。どうかしたか」

「雪合戦の優勝商品のことなのですが」

「おう。シュウの何を出すか決まったのか」

「はい。ドールです」

「ド……?」電話の向こう、眉を寄せたリュウ。「ばっ、おまっ……!」

 驚愕した。

「ダッチかよ!?」

「へっ!?」

「ヤロウのダッチとかって止めてくれ気持ちわりぃっ!」

「ちょっ――」

「シュウの奴何考えてんだよ、すーげー思い切ったなダッチだなん――」

「ちっ、違います違います違いますっ!」カレンは狼狽してリュウの言葉を遮った。「そんなのではないのですわっ! あたくしが持ってるようなドールですわっ!」

「何だ。ああ、驚いた」

「それはあたくしですわっ…! まったくもうっ、リュウさまったら……!」

 と、赤面するカレン。
 リュウが続ける。

「んで、話の続きだが」

「あ、はい。それで優勝商品は――」

「おまえどこでダッチ知ったの」

「……。…続きってそっちですか」

「意外なもん知ってんなーと思って」

「ネ…、ネットでドールについて調べているうちに偶然辿り着いたという感じですわ」

「へー」

「は、話を優勝商品のことに戻してください、恥ずかしいですわっ…!」

 と思わず周りを気にしながら言ったカレン。
 リュウが話を戻す。

「おう。そのシュウ人形、どこで手に入れたんだよ」

「現物はまだないのですが」

「これから手に入れんのか」

「えと、シュウとあたくしの知り合いの男の子がドールを作っているのです。ミヅキくんというのですが、彼の作るドールは本当にとても上手で…」

「ふーん」

「そ、それでリュウさま? 訳あって優勝商品は『シュウのドール』ではなく、『シュウのドール購入券』がよろしいのですが……」

「つまり優勝した奴が、そのミヅキに金払ってシュウの人形買うってことか」

「は、はい」

「とりあえず優勝できなかった一部のシュウファンは阿鼻叫喚になりそうだな」

「そ、そうかも…。シュウに似てないドールだったらまだしも、ミヅキくんのことだからシュウそっくりに作るでしょうし」

 と苦笑したカレン。
 リュウが続ける。

「ふーん、そっくりに……か」と、リュウは数秒間を置き、「面白そうだから、オークションすっか」

「えっ?」

「ミヅキはそのシュウ人形いくらで売るって?」

「た、たぶん10万くらいだと思いますが」

「んじゃ、開始価格10万だな。んで、購入券をもらえるのは雪合戦ランキングトップ20のハンターとする。んで、優勝者には加えて100万ゴールド、準優勝者には50万ゴールド」

「オークション…」

 呟いたカレン。

(これでとても高い値がついたら、ミヅキくん自信を取り戻せるわよね。生活苦からも抜け出せるしっ…!)

 リュウが続ける。

「ミヅキに伝えとけよ。んじゃ、俺仕事だから」

「あ、はいっ。ありがとうございます、リュウさま」

 電話を切ったカレン。
 急いで店の中へと戻る。

「シュウ、ミヅキくん! 聞い――」

 カレンは眉を寄せて言葉を切った。

「たっ、助けてくれカレェェェェェェェェンっ!!」

 と、シュウ。
 ミヅキに服を剥ぎ取られようとしている。

「おとなしく脱いでよ!」と、携帯電話のカメラをシュウに向けながらミヅキが声をあげた。「細かく撮らないと、そっくりに作れないんだから! ああもう、ハサミ持って来て切るよ!?」

 カレンは苦笑し、ミヅキのところへと歩いて行った。

「ミヅキくん、ここではちょっとまずいのではないかしら」

「その雪合戦大会? って、元旦なんでしょ? 今日から取り掛からないと作り終わらないよ」

「あ…、そうですわよね。やっぱりあれなのかしら? 写真より実物見ながらの方が作りやすいのかしら?」

「そうだね。実物あった方が作りやすいよ。ぼく男ドールは初めて作るし尚更ね」

「そう……」

 カレンは考える。

(時間がないし、なるべく頻繁にシュウに会わないといけないわよね…。それなら……)

 と、シュウの顔を見上げるカレン。

「ねえ、シュウ」

「なっ、何だカレ――ぎゃああああっ! ミっ、ミヅキてめっ…!」

「これから約一週間のことなのだけれど」

「お、おう? ――って、ちょ、おまっ、ドコ撮ってんの!?」

「ミヅキくんをお屋敷に泊めてあげられないかしら」

「ああ、なるほどな。それなら製作捗るな――って」

 シュウは眉を寄せた。
 カレンの顔を見る。

「何だって?」

「これから一週間、ミヅキくんをお屋敷に泊めてあげられないかしら」

「なっ…!?」シュウ、驚愕。「ほっ、本気で言ってんのおまえ!? こんな羊の皮被ったオオカミと一つ屋根の下に暮らす気か!?」

「何もしないって言ってんでしょ」

 と、ぐりぐりとシュウの靴を踏みつけるミヅキ。

「いででででっ! なっ、何すんだてめえっ!」

「ぼくもその方が都合いいんだけど?」

「うちの親父が許さねーよ。初対面のヤロウを泊めるなんて」

「そんなことないと思うのですわ、シュウ」と、カレン。「さっき、リュウさまにお電話したのだけれど、ミヅキくんの作ったシュウドールをオークションにかけることになったのですわ」

「オークション?」

 と鸚鵡返しに訊いたシュウとミヅキに、カレンはリュウから言われたことをそのまま伝えた。
 それで、と続ける。
「オークションで高値をつけるためには、なるべくシュウそっくりに作ることが大切でしょう? 面白そうだからってオークションを提案したのはリュウさまだし、優勝商品のためとなればミヅキくんの宿泊許可を頂けるのではないかしら」

「えぇ…?」と眉を寄せたシュウ。「うちの親父がそう簡単に行くかなあ」

「大丈夫なのですわ、シュウ」とカレンがにっこりと笑う。「リュウさまの愛するキラさまさえ味方につけてしまえば、あとは余裕でこっちのものなのですわ♪」

「……」

 シュウ、苦笑。

(オレも親父も、愛する女の手の内だな…)
 
 
 
 PM7時。
 仕事が終わったシュウは、カレンと共にミヅキのアパートへと向かった。

 ミヅキの一週間分の着替えなどが入ったバッグと、ドール作りに必要なものが入ったバッグ。
 2つの大きなバッグのうち、シュウは大きな方を持った。
 ミヅキが小さな方を持ち、シュウの屋敷へと向かって歩き出す。

「ねえ、あんたさ」と、ミヅキがシュウの顔を見上げた。「妹が7人いるんだっけ?」

「おう。あと4歳の弟が1人。ジュリっていうんだけど、すーげー可愛いんだぜ! 女の子みたいだけど、女の子より可愛いんだなコレがっ!」

「…そういうのって自慢に思うわけ」

「おう、思うぜ!」

 はっきりと笑顔で答えたシュウの顔を見たあと、ミヅキは前を向いて続けた。

「妹さんたちも、皆そう思ってんの」

「思ってるぜ。それどころか、親父も母さんもリンクさん一家もレオ兄もグレルおじさんも、みぃーんな思ってっけど?」

「あと、あたくしもですわ」

 と、カレン。
 ミヅキの不安そうな横顔を見て言う。

「大丈夫よ、ミヅキくん。みんな、ミヅキくんのお姉さまやミヅキくんの彼女だった子たちとは違うのですわ」

「? 何の話だよ」

 とシュウが首をかしげると、ミヅキが「ふん」と鼻を鳴らした。

「あんたには関係ないよ」

「うわ、ムカつく。ま、おまえのことなんてどーでもいいけどよ」

 とミヅキ同様「ふん」と鼻を鳴らしたシュウ。
 ミヅキの横顔を斜め上から見下ろす。

 カレンに大丈夫と言われても、なんだかやっぱり不安そうだ。

(そういえばカレンが、ミヅキは姉にいじめられてきたって言ってたっけ。オレも皆にいじられまくってときどき泣くけど、それとはまた違うんだろうな…)

 屋敷の前まで来ると、シュウは鼻をくんくんとさせた。

「うわ、今日カレーかよ」

「あらヤダ、本当だわ。もっと早く帰ってくるべきでしたわね」

 と、カレン。
 ミヅキが首をかしげる。

「カレーだと何かあんの?」

「うち、カレーはスパイスから調合して作るんだけどよ。それぞれの好みに合わせて超甘口と甘口、中辛、辛口、激辛を作るから大変なんだよ。さらにすげー食うのもいるし、変な具を入れたのを食いたがるのもいるしで、カレーのときが一番調理に時間かかんの」

 とシュウが答えながら屋敷に入ると、そこに仁王立ちで待っていた者が一匹。
 ミヅキをじろりと見下ろしながら口を開く。

「おかえり、兄貴、カレン」

「た、ただいま……、サラ」

 と苦笑したシュウとカレン。
 以前ミヅキがカレンに何をしようとしたか知っているサラ。

「アタシ、あんたが嫌いなんだよね」

 と、それはもう、ずばっと言い退けた。
 自分よりも数cm背の高いサラの目を見て、ミヅキが言う。

「ぼくはもう、何もしない」

「……」

 髪の毛と同じ栗色をしたミヅキの瞳。
 心の内を見抜くように、じっと見つめて10秒。

 サラが安堵したように小さく溜め息を吐いた。

「っそ、分かった。信じる」

「ありがとう」

「うん。でさ」と、小声になるサラ。「兄貴のダッチ作んでしょ…!?」

「――ちっ」シュウ、驚愕。「ちげええええええええっ!! んなわきゃねえだろバカっ!!」

「何だ、違うのか。あはは」

「本当リュウさまそっくりね、サラ…」

 と恥ずかしそうに苦笑するカレン。
 その傍ら、

(前にいきなりパンツの中見られたときも思ったけど…。サラちゃんて女の子っぽくないよな……、行動も、思考も)

 とミヅキが確信していると。
 奥からキラがやってきた。

「おかえり、シュウ、カレン」

 ミヅキの目が丸くなる。

(うわあ…、キラさんだ。近くで見ると本当に綺麗だなあ。髪の毛とかガラスみたいだ)

 キラの黄金の瞳がミヅキに移り、ミヅキが慌てたように口を開いた。

「あっ…! は、初めまして、ぼくミヅキといいますっ…!」

「うむ。電話で話は聞いている。2階の余っている部屋を自由に使って良いぞ」

「あっ、ありがとうございますっ…!」

 と頭を下げるミヅキ。
 胸がどきどきとする。

(す、すごい人(猫)と話しちゃった……!)

 キラがシュウを見て言う。

「シュウ、ミヅキを部屋へ案内してやれ。もうすぐご飯だぞ」

 承諾し、カレンと共にミヅキを連れて2階へ続く階段を昇るシュウ。
 感動した様子のミヅキを見て苦笑する。

「言っておくけど、うちの母さんときどき超天然バカだから……」

「バカ?」とぱちぱちと瞬きをしたミヅキ。「あのキラさんがっ? まさか」

「いや、うん…、そのうち分かる」

「ふ、ふーん?」

 2階の廊下へと着くと、カレンは自分の部屋へ。
 シュウはミヅキを連れて、空いているジュリの隣の部屋へと向かった。

「この部屋好きに使っていいぜ」

「分かった」

「じゃ、ちょっとオレ着替えて来るから」

 と、シュウが出て行ったあと、ミヅキは部屋の中を見渡した。

(広いなあ…。ぼくのアパートの全室を繋げても敵わなかったりして)

 部屋の中を歩き、扉などを開けてみる。

(でっかいクローゼットだなあ。…わ、バスルームあるよ。しかもぼくの家よりバスタブ大きいし。…こっちのドアは何だろ。もしかしてトイレかな)

 と、そのドアを開けたミヅキ。

「――うっ、うわあっ!」

 仰天して思わず声を上げた。

「入ってます…」

「ごっ、ごめんなさいっ!」

 慌ててドアを閉める。
 便器にマナが座っていた。

(なっ、何で入ってんの!?)

 面食らって赤面するミヅキ。

 ドアを閉めてから数秒してマナが出て来た。
 ミヅキと向かい合う。

「…マ、マナちゃん…かなっ? な、流さないの?」

「座ってただけ…」

「そ、そう」

「かくれんぼ中だから隠れてた…」

「そ、そかっ…」

「この間は…」と、ミヅキに頭を下げるマナ。「お買い上げありがとうございました…」

「えっ? …あ、ああ、痺れ薬ね。あ、あのときはどうもっ…。ぼ、ぼくの顔、覚えてくれてたんだっ?」

 マナがこくんと頷き、無言でミヅキの顔を見つめ始めた。

(な、何っ…? ぼくの顔を見て、何を思ってるんだろうっ…? やっぱり女みたい、とか……?)

 マナが長い間動かず喋らずなものだから、ミヅキは困惑しながら口を開いた。

「え…、えと、マナちゃん? 何…してるのかなっ?」

「接待…」

「……」

 ミヅキは思う。

(この子って絶対変わってる気がする……)

 そこへミヅキの耳に、泣き声が聞こえてきた。

「うわあああああん! みんなどこに隠れてんのーっ!?」

 と、部屋のドアを開けて顔を覗かせたのは。

「あっ、マナ見っけ!」

 ユナだった。
 ミヅキの姿に気付き、ぱちぱちと瞬きをする。

「あれ? お客さんっ?」

「は、初めまして。ミヅキです」

「あっ、兄ちゃんのお人形作る人! 初めまして、ユナです! うわあっ、男の子なのにとっても可愛いんだねえーっ! すごーいっ、ジュリ以外でこんなに可愛い男の子初めて見たよ! 女の子みたーいっ!」

 女みたい。

 その言葉でミヅキの胸が痛んだ。
 痛い記憶が蘇る。

(やっぱりぼくのこと、バカにするのかな…。ぼくの姉たちみたいに……)

 ミヅキに興味津々と寄るユナ。
 その瞳はキラキラと輝いていた。

 バカにした様子など、まるで感じられない。

(…バカに…しないんだ……)

 それはミヅキにとって驚きのこと。

 ミヅキはポケットからハンカチを取り出した。
 ついさっきまで泣いていたユナの瞼が濡れている。

「はい、ユナちゃん。これで涙拭いて」

「ありがとう、ミヅキくん。あたしすぐ泣くんだ」

「そうなんだ。かくれんぼで皆がなかなか見つからなかったのかな?」

「うん、1分もの間」

「……」

 どうやったら泣けるんだろう。

 ミヅキが本気で疑問に思っていると、今度はドタバタと騒がしい足音が近づいてきた。

「みっんなああああああああああああっ!!」

 と、ハイテンションでドアを蹴り開けて飛び込んできたのは。

「かくれんぼ中断してご飯だよーーーーーんっ♪」

 レナだった。
 ミヅキの目が丸くなる。

(か、可愛い女の子がドアを蹴った…)

 同時にミヅキを見たレナの目も丸くなる。

「わわ、知らない美少女がいる」

「男の子だよ、レナ」と、ユナ。「ほら、兄ちゃんのお人形作るっていうミヅキくん」

「えっ…!? ウッソ、男の子なの!?」

 と、驚愕しながら改めてミヅキの顔を見るレナ。

「初めまして、レナちゃん」

 と笑顔を作ったミヅキ。

(すごい驚きようだな。何だろ…、この子には女みたいで気持ち悪いって思われたのかな……)

 そんなことをまた不安に思う。

 目を丸くしてミヅキの顔を見つめるレナ。
 その胸中は。

(こっ、こんな可愛い男の子、ジュリ以外にもいたんだっ…! うっわあぁ…、お人形さんみたいっ…! お肌つやつや、おめめクリクリ、髪の毛サラつやっ…! すっごいよおぉ……!)

 レナの頬が赤く染まった。

(あれ、意外な反応)

 と、ミヅキは首をかしげる。

「レナちゃん?」

「えっ!?」と、声を裏返すレナ。「あっ、えとっ、ご、ごごごごごごご飯できましたっ! え、ええええ遠慮なく食してくださいっ!」

「あ、ありがとう」

「ご、ごごごごごごごごごごごご趣味は!?」

「へ?」

 ぱちぱちと瞬きをするミヅキ。

(とりあえずこの子に好かれたのは分かった)

 マナが言う。

「お見合いみたいだね…」

「えっ!? そっ、そんなんじゃっ……!!」

 と顔を真っ赤にするレナを見たあと、マナがベッドに向かって行った。
 布団をがばっとめくる。

「ご飯だよ…」

「――ハッ!」

 と、慌てて何かを背の下に隠したのはリンとラン。

(リンちゃんとランちゃん? そ、そんなところに居たのか、気付かなかった…。ていうか…)

 ミヅキはしかと見た。

(男物のパンツ嗅いでたよ…!?)

 リン・ランが慌てたように声をそろえる。

「あっ、あああ、兄上のパンツなんかじゃないのだっ!」

 ミヅキ、驚愕。

(し、しかも兄の――シュウのパンツなの…!?)

 リン・ランが興奮した様子でミヅキを見る。

「とっ、等身大兄上人形にこのパンツを穿かせて、わわわ、わたしたちにくださいなのだっ……!」

「…と、等身大っ…!?」

「ハァ、ハァ、ハァっ…! と、等身大兄上えぇ…! 細部まで作られた等身大兄上えぇ…!」

「いや、えと、そのっ……」

 この子たち、ぼくよりヤバイっ…!

 と、ミヅキがさらに驚愕していると。

「ほーら、ご飯だって言ってるでしょう?」

 と、今度はミラが姿を見せた。

(ミラちゃん…だよね? 妹さんの中じゃ一番キラさんに似てるかな? わあ…、可愛いなあ……)

 と感嘆しているミヅキに、ミラが笑顔を向ける。

「初めまして、ミヅキくん。私、長女のミラです」

「あ、初めましてっ…」

「お人形さん作れるなんて、すごいんですね。しかもモデルと瓜二つに作れちゃうなんて」

 と、ミラがミヅキに寄ってきた。

(他の妹さんの中で、一番しっかりしてそう…ていうか、マトモそう)

 と思ったミヅキだったが。

「あ、あの、ミヅキくん。えとっ、そのっ…」と、ミラがもじもじとしながら訊く。「パパのお人形も作れちゃうのっ…?」

「リュウさんですか? …それはまあ、許可を頂けるのなら」

「ええっ…!? そっ、そんな、パ、パパのお人形だなんてっ…! ああっ、そんなっ…、ああんっ、そんなっ……!」と、ミラが頬を紅潮させ、「ダメエェェェェェェェェェェェェェェェっっ!!」

 ブハッ!!

 と鼻血をミヅキの服に浴びせてぶっ倒れた。
 ミヅキ、前言撤回。

(マトモじゃないマトモじゃないマトモじゃない)

 のち、血に染まった己の服を見ながらパニックに陥りそうになる。

(ねえ、何この家族…!? 色々と思ってたのと違うよっ……!?)

 そして確信する。

(ぼく、やばいところに来ちゃったよ)

 でも、

(決してぼくを変な目で見ないんだな。バカにした様子も、気持ち悪いって思ってる様子もない)

 その理由は、

(ぼくを上回ったものを持つ家族だから……と見た)
 
 
 
 
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