第51話 六女の仕返し 中編


 先日、シュウからみっちりと説教されたマナ。
 どうやらとても腹が立ったらしく、仕返しにとシュウにとある薬を飲ませた。
 すると、リンクの誕生日パーティーでシュウとその家族、カレン、リンク一家、レオンとグレルが集まっている中、シュウの中身が別人のように変わってしまった。

 そんなシュウをデジタルビデオカメラで撮っているマナ。
 シュウに何を飲ませたのかと問われ、一同の注目を浴びる中でこう答えた。

「『ニューハーフになる薬・ハーフ用』…」



「で、ではっ…」と、リン・ランが困惑しながら声をそろえる。「兄上はニューハーフになってしまったのかっ?」

 マナが頷いて言う。

「でも安心して…。明日の朝には元に戻るはずだから……」

「そ、そうかっ……」

 とリン・ランはとりあえず安堵したようである。
 同時に一同も安堵した。

 サラが笑い出す。

「こりゃ楽しいわ! マナ、しっかりビデオ撮っておくんだよ!」

「ラジャ…」

「仕返しとはいえ、すごい薬飲ませたね…」

 そのせいでシュウにキスされるという被害を被ったレオンが苦笑した。
 シュウの身体を抱き締めているグレルを見て言う。

「ちょっとグレル、いい加減にシュウを放して」

「えー? だってシュウが喜ぶからよー」

「それ以上締めたら死ぬから」

「そうかあ?」

 とグレルがシュウを放すと、シュウがへなへなと床に座り込んだ。
 決して細くはないのだが、グレルの異常な怪力に折られそうになった己の身体にシュウは治癒魔法を掛ける。

「ふぅ、色々興奮して汗かいちゃったわっ……! あたしお風呂入ってこようかしら。えーと……」

 と、小さなジュリを除く男たち――リュウとリンク、レオン、グレルの顔を見回し、シュウが頬を染めながら身体をくねらせる。

「あん、でもシュウちょっと恥ずかしいっ」

「誰がおまえと一緒に風呂入るか」リュウが顔を引きつらせて言う。「風呂入りたきゃ一匹で入ってこい、バカが」

「パパひどぉぉいっ!」

 ぽかぽかとリュウの胸を殴るシュウ。

「よっ、寄るなって言ってんだろうがっ!!」

 バキィっ!

 と容赦なくリュウに殴り飛ばされた。
 床に倒れたシュウが泣き出す。

「わあああああん、パパったらひどいわああああああああっ!! あたしだって背中流しっこしたいのよおおおおおおおっ!!」

 レオンが溜め息を吐き、リュウの肩を叩いた。

「ちょっとひどいんじゃない? リュウ」

「あ? 哀れむならおまえがシュウと風呂入ってやれよ」

「え!? …え、えと……」とレオンが顔を引きつらせながらリンクに顔を向ける。「…リ、リンクお願い……」

「え!? おれ!? いっ、嫌や! 絶対嫌やっ!!」

 必死に首を横に振るリンク。
 リュウとリンク、レオンの顔を見回したあとにグレルが言う。

「仕方ねーなあ、んじゃあオレがシュウと風呂入ってくるぞーっと♪」

「――!?」

 待ってくれ!

 リュウとリンク、レオンは必死にグレルを押さえつけた。

「いやいやいやいや!! やめてくださいっす師匠は!! 俺の息子の貞操が本気で危ねえっ!!」

「せ、せやで師匠っ!! あんたシュウに求められたら喜んで応えるやろ!! 昔おれにも熱いキスしたしっ!!」

「駄目だからね、グレル!! 絶対に駄目だからね!! シュウはあくまでも今だけニューハーフなんだからね!? 分かった!?」

「分かったよ、うるせーなあ」

 と口を尖らせ、承諾したグレル。

 リンとランが顔を見合わせたあと、頬を染めながら手を上げた。

「はいはいはい! わたしたちが兄上とお風呂に入りますなのだ!」

「嫌よ!」とシュウが即答。「あなたたち、あたしのおっぱいを見てバカにする気なんでしょうっ!?」

「ちっ、違いますなのだ兄上っ!」と、リン。「そんなことさっぱり考えてなかったのだ!」

「じゃあ何を考えていたのよ!?」

「なっ、何をって決まっているではありませんかなのだ!」と、ラン。「わたしたちは、兄上のお身体を超・隅々まで洗おうと思っただけですなのだ!」

「フン! そんなのどうでもいいけど、あたしはあなたたちとは入らないわ! えーと、男性たちが駄目ならー……」

 とシュウが女たちを見回し、カレンに目を留めた。
 カレンのところへと跳ねてきて両手を取り、

「カレン、一緒にお風呂入りましょっ♪」

「え!?」カレン、驚倒。「あっ、あたくしですの!?」

「ええ。あたし、あなたのことは好きよ? だって、親近感が湧いちゃうんだもの。こ・の・へ・ん・がっ♪」

 つんっ♪

 とシュウが指で押したのはカレンの胸である。

「……。そう…」

「それじゃ、1階の大きいお風呂行きましょっ♪」

 ぐいぐいとシュウに引っ張られていき、カレンは狼狽して声をあげる。

「えっ、ちょっ、ええええええ!? シュ、シュウ待って!」

「何よう、カレン? 女同士で恥ずかしがることなんかないわ」

「お、女同士って――」

「カレンちゃん…」

 マナがカレンの声を遮った。
 ビデオカメラを回したまま言う。

「大丈夫、兄ちゃん元に戻ったら今の記憶なくなってるから…」

「そ、そう…。でも――」

「カレンちゃん…」マナが再びカレンの声を遮った。「兄ちゃんとお風呂入って…」

「え、ええっ?」

「見たいんだよね、あたし…」

「な、何をかしら?」

「元に戻ったとき…」

「う、うん?」

「このビデオ見た兄ちゃんが、必死にカレンちゃんに土下座する姿を…」

「……」

 この子、本気で末恐ろしいのですわ。

 カレンはシュウに一階の大きなバスルームまで引っ張られていった。
 
 
 
 一階にある大きなバスルームの脱衣所に入ると、シュウがカレンとマナに背を向けて服を脱ぎ始めた。
 カレンはカメラに映らないところで服を脱ぎながら、マナに言う。

「ね、ねえ、マナちゃん。撮るなら脱衣所から音声だけでお願い」

「分かった…。カレンちゃんの裸映すわけにはいかないしね…」

「よかった、ありがとう」

 服を脱ぎ終わったシュウが、胸からタオルを巻きカレンの方に振り返って言う。

「それじゃ、あたし先に中に入ってお湯を作っているわね」

「え、ええ、分かったのですわ」

 シュウが脱衣所から浴室の中に入って行く。

 カレンも服を脱ぐと、胸からタオルを巻いた。
<  シュウが今ニューハーフになっていて心が女でも、今の記憶がシュウの中に残らないとしても、カレンの中のシュウは男には変わりはない。
 恥じらいを捨てることはできなくて、タオルをしっかりと巻く。

「そ、それじゃあ、マナちゃん。ここから音声だけでお願いね」

「ラジャ…」

 と、マナが承諾したのを確認すると、カレンは浴室の中に入った。

 シュウが空中に水魔法で水を起こし、炎魔法で熱して湯を作っているところだった。
 バスタブに水道から水を溜めて沸かすよりもずっと早い。
 湯はあっという間に出来上がり、それはバスタブの中に入れられた。

「さっ、入りましょカレンっ♪」

「え、ええ…」

 カレンは、長い脚を伸ばしてバスタブに浸かるシュウの足元からさらに遠く離れ、膝を抱えて入った。
 シュウがおかしそうに笑う。

「やーね、カレンったら。そんなに離れなくてもいいじゃない。取って食いやしないわよ、女なんて」

「そ、そのへんは安心しているのだけれどっ…。そのっ…、や、やっぱり恥ずかしくてっ……」

「まー、カレンったら乙女ねえ。女同士で恥ずかしがることないわ。ほら、もっとこっち来なさいよ」

「きゃっ…!」

 シュウに腕を引かれ、その勢いでシュウの膝の上に跨ったカレン。
 見る見るうちに顔が赤くなっていく。

 慌てて避けようとするカレンの肩を、シュウが両手で掴む。

「はぁ…、あなたはいいわねぇ、本物の女の子で。羨ましいわ、この小さな肩」

「あ、あのシュ――」

「それに」と、シュウがカレンの肩から二の腕に手をずらす。「いいわねぇ、柔らかい二の腕で。ここって、おっぱいと同じ感触って言うわよねぇ」

 シュウが自分の二の腕を掴んだあとに、自分の胸を揉む。

「あーら本当だわ。どっちも硬くてやんなっちゃうー」

「…そ、そ、そ、そうっ…」

 シュウが自分の身体を触っているうちにシュウの上から避け、背を向けたカレン。

「ねぇ、カレンは?」

 と、腰に回ってきたシュウの片腕に引っ張られ、カレンは再びシュウの膝の上に。
 背中がシュウの胸に密着してカレンの身体が硬直してしまう中、シュウがカレンのタオルを取った。

「きゃっ!」

「あーんた、本当におっぱいないわねー。あたし嬉しくなっちゃうっ♪」

 シュウがそう言いながら、両手でカレンの胸に触れる。

「えっ…ちょっ、シュ……!?」

 顔を通り越し、カレンの耳や首まで赤くなっていく。
 そんなカレンなんてお構いなしに、シュウはカレンの胸を揉んでいる。

「あらぁ、本当だわぁ」

 もみもみもみ…

「貧乳でも柔らかさは二の腕と同じだわぁ」

 もみもみもみもみ…

「あたしもせめてこの柔らかさがほしいわぁ」

 もみもみもみもみもみ…

「あっ…やっ、ちょ、シュ、シュウっ!!」カレンは必死にシュウの手を避け、胸を両腕で押さえた。「さっ、さっ、触っちゃダメなのですわっ……!!」

 カレンの耳に、自分の動悸が響いている。
 シュウが口を尖らせて言う。

「何よう、減るもんじゃあるまいしぃー。むしろ揉めば増えるっていうかー」

 と、自分の胸を揉み始めたシュウ。
 ふと動作を止めてカレンの顔を見、眉を寄せる。

「やだ、カレンってば何を心配したわけ? あたし女相手にアレ大きくなっちゃったりしないわよ」

「…だ、だからその辺のことは安心しているのですわっ…! だっ、だけど……!」

「何よう? …あ、もしかして感じちゃったわけぇ?」

「!? ちっ、ちがっ……!!」

「んもぅ、カレンったら! サービスでもうちょっといじってやるから腕避けなさいよ」 「え!? ちょっ、シュ――」

「そーらそらそら、大きくなーれっ♪」

「ちょっ、やっ、やだっ、シュ――」

 カレンの言葉を遮るように、バスルームのドアが開く。

 バンっ!!

「兄上っ!!」

 と、姿を見せたのは、全裸のリンとランだった。
 
 
 
 
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