第115話 ボクに妹さんをください


 3月末。
 スーツを身にまとったシュウ。
 カレンと共に、カレン宅の前に立っていた。

 父親の押し付けられた政略結婚とはいえ、愛するカレンとの結婚のため。
 カレンの兄・ヒース(28歳)から是非とも合格をもらうために。

 カレンは物心ついたときから、『将来結婚するならユーモアのある男性を選べ』とヒースに言われていたのだと言う。

 そしてそのユーモアが、

(何故、寒いダジャレやギャグ、死語なんですかオニーサン…)

 そんなものシュウの頭ではほとんど思い浮かばなくて、何となく一番知っていそうなグレルに協力してもらい教えてもらった。
 加えて、事情を聞いたサラとレオンも協力してくれた。

「兄貴とカレンの結婚が決まって親父がはしゃいでるときに、アタシとレオ兄も結婚のこと親父に切り出すよ! そうすればもう勢いと機嫌の良さでOKくれるかもしれないし!」

 なんてサラは言っていたが。
 結構なプレッシャーである。

(グレルおじさんやサラ、レオ兄から教えてもらったダジャレだのギャグだの死語だの、ぜーんぶ紙に書いて覚えてきたけど…。だ、大丈夫かなオレ……)

 カレンがシュウの顔を覗き込んだ。

「…大分緊張しているようだけど大丈夫かしら?」

「お、お、おうっ! へーきへーきっ!」

 と言ったシュウだったが。

 ピっ、ピピピピピピピピピンポーン…

 なんて、以前カレン宅を訪ねたときのように緊張で指が震えていた。
 以前の緊張に加えて、今回はいろんな意味の緊張で。

 少しして聞こえてくるカレンの兄――ヒースの声。

「いらっしゃーーーい♪」

 初っ端からギャグ来た…!

 思わず顔が引きつってしまうシュウの傍ら、カレンが恥ずかしそうに咳払いをした。

「お、お兄さま? そ、それは新婚さんになってから言ってちょうだいっ…!」

「我が妹・可憐カレンよ」

「……。はい、お兄さま?」

「おひさしブリーフ」

「……。相変わらず寒いのですわ、お兄さま」

あったけーシャレって、あったっけ?」

「……。早く開けてちょうだい」

「ちょっとマッチョれ」

「……」

 カレンが深い溜め息を吐く傍ら、シュウは動揺していた。

(オニーサン只者じゃねえっ…! 何でそんなに連発できるんだ……!?)

 シュウの耳に聞こえてくるスリッパの音。
 落ち着いた歩き方だ。

 カチャっ…

 と鍵が開き。
 玄関のドアがゆっくりと開いていく。

(うわぁ…)

 とヒースを見て目を丸くしたシュウ。

 身長は175cmくらいだろうか。
 年齢の割には幼い顔に、黒縁メガネ。
 カレンと同じ赤い髪はきっちりと七三分けだ。
 これがまた、似合わない…。

(カ、カレンが言ってたけど、オニーサンて本当に真顔だな…。まったく笑いそうにないっていうか…。わ、笑い取れんのかオレ!?)

 なんて心配になっているシュウに、両手を突き出したヒース。
 そして、

「やーーーっ!」

 とっ、登場シーンもギャグ忘れねえっ…!

 引きつるシュウの笑顔。

「ふ、普通に出てちょうだいお兄さまっ…!」

 とカレンが顔を赤くし、シュウを引っ張って玄関の中に入った。
 靴を脱ぐ前、シュウはヒースに手土産を差し出しながら頭をさげる。

「は、初めましてオニーサンっ! こ、これっ、つまらないものですがっ…!」

「ありがとさーーん」

 とシュウから手土産を受け取るヒース。
 シュウが顔をあげると、シュウの頭の先から爪先までじっくりと見つめた。

 思わず身体の脇に両手をくっ付けて姿勢を正してしまうシュウ。

「…シャレたシュウくん」

「はっ、はいオニーサンっ!」

「早速シャレシャレを言ってみなシャレ

「えっ!?」

 いきなり!?

 と、狼狽してしまうシュウ。
 何か言おうとするが、まるで出てこない。

 10秒ほど黙ってシュウを見つめていたヒースが溜め息を吐く。

「可憐なカレンが彼氏を連れて来るというものだからドキをムネムネさせて待っていたというのに……、超ホワイトキック」

「は……?」

 シュウ、困惑。

(ホ…ホワイトキックってなんだ……!?)

 カレンがシュウに耳打ちする。

「む、昔のギャル語らしいわよ。意味は『白ける』」

「し、白け……!?」

 オニーサン白けちゃったのか!?

 シュウ、再び狼狽。
 ヒースの背をあれやこれやと考えながら着いて行く。

(む、向かってる先はリビングじゃないみてーだなっ…! カレンが食事作る的なこと言ってたし、キッチンかっ…!? ええと、キッチン…キッチン……、あっ! キチンとしたキッチン! これをまず言おう!)

 と、思ったシュウだったのだが。

「我が家のキチンとしたキッチンへようこそ」

 とっ、取られたああああああっ!

 シュウ、驚愕。

(何だこの人、何だこの人、何だこの人っ…! つっ、つえぇぇっ…! ボケっとしてたら全部言われちまうっ……!)

 カレンがテーブルを指して言う。

「シュウ、そこの椅子に座って待っててちょうだい」

「う、うんっ」

 よし、行けオレ!

 と、テーブルの方へと歩いて行き、イスに手を掛けたシュウ。
 ちょっと赤面しながら言う。

「…こっ…、このイス、イイッスね」

ナイスなイスでしょう」

「――!?」

 なっ、なんって切り返しの速さだオイっ…!

 愕然としてしまうシュウ。

 一方、変わらず真顔で冷静沈着といった感じのヒース。
 シュウの向かいの椅子に座り、冷蔵庫の前に立っているカレンに顔を向けた。

可憐カレンよ」

「いちいち可憐をつけなくていいわ、お兄さま」

「何故朝から来てくれなかった」

「朝は色々忙し――」

朝食がなくて、超ショック

「……。えーと、何を作ろうかしら」

しかとシカトか」

「鶏肉が丸ごと1匹あるからこれを使いましょう」

鶏肉の皮は取りにくいぞ」

「お汁か何かほしいわよね」

なんか知るもんか」

「あ、スープを作りましょう。この貝で」

貝かいっ!」

「……お兄さま?」と、顔を引きつらせてヒースに振り返ったカレン。「お酒でも飲んでおとなしく待っててちょうだい。大好きな焼酎でよろしいかしら!?」

焼酎しょっちゅう飲むが、本日は月曜日だから飲マンデー避けるとしよう。シュウくん、飲みすぎは肝臓にいかんぞう?」

 なっ、何このオンパレード……!!

 シュウ、もはや半泣き。

(や、やべえ! オレももっと何か言わなきゃっ、何か言わなきゃっ…! 合格もらえねえよっ……!)

 そんなシュウを見てカレンが苦笑した。

「シュウ、とりあえずビールでも飲んで落ち着いて」

「う、う、うん…。え、えと……、い、いただきマンモス」

 と、シュウ。
 カレンが持って来てくれたビールをごくごくと飲む。

可憐カレンよ」

「何よお兄さま」

「兄には焼酎お湯割り梅入りで」

「あら、お兄さまはお酒はいらないのでしょう!?」

「冗談はよし子さん」

「いるならいるで最初からそう言ってちょうだい!」

「アイムソーリーヒゲソーリージョリジョーリー」

「…はい、梅入り焼酎お湯割り! これでしばらくおとなしくしててちょうだいよ!?」

「ありがとーさん。ずずずっ…ごくっ。ふぅ…、うめぇ」

 カレンが溜め息を吐き、料理を開始する。
 シュウは落ち着こうとビールをごくごくと飲み続けている。

(何か言わなきゃ…! オニーサン笑わせること何か言わなきゃっ! 早く何か言えよオレっ……!!)

 焦りのあまり冷や汗を掻きそうになっているシュウの傍ら。
 よっぽど妹が可愛いのか、ヒースはまたカレンを見ながらダジャレのオンパレード。

「あら?」

「どうした可憐カレン

「このキャベツ腐りかけね」

キャ! ベツのにしてっ」

「あっ、ジャガイモ落としちゃった」

ポテッと?」

「うーん、パイナップルも入れようかしら」

「そのパイン、すっパイン?」

「やだ、ショウガがないわ」

しょうがないな」

「デザートを先にお皿に盛っておきましょう」

「それはサラダ皿だ

「あっ、シュウビールおかわり? 待って、今持って行くわ」

板前はソコにいたまえーーーっ!!」

「……お・に・い・さ・ま!?」と、引きつるカレンの顔。「おとなしくしててって言ったでしょうっ!? うるさいのですわっ!」

「すんまそん」

「まったくもうっ! ごめんね、シュウ、今ビール持って――」

「い、いや、オレが取りに行くからいいよ」

 と立ち上がったシュウ。

(カレンが作る料理を察してダジャレを考えるんだオレっ…!)

 と、カレンのところにビールを取りに行った際に、料理の材料をチェックすると、カレンがグラタン皿に米を詰めているところだった。
 脇には鶏肉やチーズがある。

(チキンドリアと見た。チキンドリア…、チキンドリア……。よし、1つ思い浮かんだ)

 ビールを受け取り、再び席に戻るシュウ。
 ヒースがシュウを見て言う。

「シュウくん、少し真面目な話をしようか」

「は、はいオニーサンっ!」

 真面目な話と言われ、ちょっとドキっとしたシュウ。
 だが、その方が楽そうだった。

「シュウくんは超一流ハンターだそうだね」

「は、はい。まだなったばかりですけどっ…」

「シュウくん…、私はね」

「はい」

ハンターはんたーい」

「えっ…!?(オニーサンてハンター嫌いなのか!?)」

「うっそぴょーん」

「…は…ははは…(シャレ言いたかっただけかよ!)」

「超一流ということは、金銭面などは安心していいんだね?」

「あのっ…、オレどうも借金ができやすいんですけどっ」

かねがね金がねぇのかね

「でっ、でもカレンさんには絶対に苦労かけませんからっ!」

「気をつけなさい、シュウくん。お金おっかねーよ?」

「き、肝に銘じておきます(真面目な話な気がしねえ…)」

 なおも続くヒースのダジャレ。
 シュウの知らないギャグ。
 聞いたこともない死語。

 己が言えたダジャレやギャグ、死語なんて数えるほどのシュウだったが、ビールを飲んでいるうちにようやく緊張がほぐれてきた。

(よし、落ち着いて頑張ろうオレ)

 やがて料理が出来上がり、カレンが運んできた。
 テーブルにならべたそれらを指で差しながら言う。

「これが貝のスープね。これはグラタンじゃなくてチキンドリアよ、ライス詰まってるから」

ライスを食べるのはつらいっす

 やっぱりヒースが口を挟んだ。

「それで前菜にバンバンジーで、これが――」

メインでしゅか」

「メインディッシュの鶏肉の酢豚風よ♪」

すぶたべなさい」

 カレンが席に付いたら手を合わせ。
 カレン、シュウ、ヒースの順に言う。

「いただきます」

「いただきマンモス」

「いただきサマー」

 ヒースに鶏肉の酢豚風をすぶたべろ(すぐ食べろ)といわれたシュウ。
 まずはそれを一口、口に入れた。

 カレンが訊く。

「どう? シュウ?」

「うん! まいうー」

「良かったのですわ。お兄さまは?」

マジまじぃ」

「……。じゃあ食べないでちょうだい」

「なんでそーーーなるのっ!」

「まずいって言ったのはお兄さまでしょう!? 何かしら!? 食べるの!?」

「あたり前田のクラッカー」

「まったくもうっ…! どう!? おいしい!?」

「チョベリグ」

 って、何だろう…。

 と疑問に思ったシュウだったが、気にしないことにした。
 チキンドリアを見る。

(よし、行くぜオレ)

 心の中、うんと頷いたシュウ。
 ヒースと目が合ったところで、

チキーン!」とフォークを持ち、「ドリアァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!」

 とチキンドリアを掻き込んだ。

(迫力でオニーサンを笑わせろオレっ!)

 はっきり言ってあつあつのドリアで舌は大変なことになっていたが、シュウは気合で掻き込む。

「ドリアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!」

「……シュウくん」

 ヒースが口を挟む。

「ドリアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!」

「そんなにドリアばっかり食べてないで」

「ドリアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!」

バンバンジーを食べて、バンバン自慰しなさい」

「――ぶっほ!?」

 なっ、なんちゅーこと言うんだこの人っ!!

 思わずむせたシュウ。
 ビールを飲んでから返す。

「…ベ…ベッドベットベットにならないように気をつけます」

「ちゃんとティッシュの中に出すんだよ」

「は、はい…(もうずっとゴムの中に出してますとは言えねえ…)」

 カレンが赤面して咳払いをする。

「や、やめてちょうだい、お食事中にっ…!」

 承諾したシュウとヒース。
 口を閉ざして食事を再開。

 と言っても、30秒後にはやっぱりヒースが一人で喋り出したが。

 デザートのプリンを食べながらヒースが言う。

プリンには栄養がたっプリン。ちゃんと食べるんだよ、シュウくん」

「はい、オニーサン」

 と言い、プリンを食べるシュウ。
 ちらりと向かいのヒースを見る。

(飯食い終わったらオレ、カレンを連れて帰るわけだけど…。はたしてオニーサンに合格はもらえたんだろうか…)

 その答えは、

「さてシュウくん。プリンを食べ終わったら、そろそろ私を笑わせてもらおうか」

 まだもらえていなかった。

 口に入れたプリンを噛まずにゴクリと飲み込んだシュウ。
 再び狼狽してしまう。

(ご、合格まだだったのかよオレっ…! オニーサンを笑わせなきゃっ、オニーサンを笑わせなきゃっ…! オレにはあと何が残っている!? …あっ、グレルおじさんから教えてもらったアクション付きのギャグ集っ!)

 プリンを食べ終わったあと、カレンは後片付けを始め。

 シュウは立ち上がる。
 そして椅子に座っているヒースを見つめ、アクションつきのギャグ開始。

「ぴっ…、びっくりくりくりくりっくり!」

 しぃーん…。

 ヒース、無反応。
 シュウは慌てて続ける。

「アイーーーン!」

 しぃーーん。

「ガチョーーーン!」

 しぃーーーん。

「ゲッツ!」

 しぃーーーーん。

「…ア、アンド・ターン!」

 しぃーーーーーん。

「コっ…、コマネチっ!」

 しぃーーーーーーん。

「コマネチ、コマネチ、コマネチィィィィィィィィィィィィっ!!」

 しぃーーーーーーーん。

 と、静まり返りまくるカレン宅のキッチン内。
 聞こえたのは、ヒースの深ーい溜め息。

(お願いオニーサン、笑って…!)

 シュウ、再び半泣き。

(オレこんなに頑張ってんのにっ…! すーげー恥ずかしいこと頑張ってんのにっ…! あとオレに残されてるのなんて、母さんの世界三大ダジャレしかっ……!!)

 ヒースが徐に首を横に振った。

「シュウくん、君はこの程度だったか。残念だ…」

「…まっ、待ってくださいオニーサンっ!!」

 と、慌てて叫んだシュウ。

(こうなったら一か八かっ……!!)

 テーブルの端に置いてあるカゴの中に入っていたミカンを取った。
 それをビールの缶の上に置き、

「アっ…、アルミ缶の上にあるミカン!!」

「――!?」

 見開いたヒースの瞳。

 続いてシュウは床の上に倒れ、

「ネコが寝込んだっ!!」

「――…っ…!!」

 震えるヒースの身体。

 そしてシュウは近くにあった座布団をぶん投げ、

「(座)布団がふっとんだあぁぁぁあああぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁあっ!!」

「――ぶはっ!!」と、吹き出したヒース。「あーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 絶対近所にまで響き渡っているだろう大声で、まさかの大爆笑。

「おっ、面白いっ!! なんて面白さだシュウくんっ!! こんな面白い人を初めて見たぞ私はっ!! あーーーっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 と、床の上で抱腹絶倒するヒース。

 シュウ、呆然。

(オレ何でこんなに笑われてるんだろう…)

 とりあえず分かったことは、

(オレの母さん、すーげー……)

 ということだった。

 カレンの後片付けが終わったあと、シュウはカレンと共に玄関へと向かう。
 靴を履き、見送りのヒースに振り返った。

「あ、あのオニーサン。今日は楽しかったです。それからごちそうさまでした」

「うむ」

「そ、それでっ、あのっ…、オニーサンっ」

 がばっと頭をさげたシュウ。
 大声で続ける。

「妹さんをボクにくださいっ!! 絶対っ…、絶対一生大切にしますからっ!!」

「……」

 数秒の無言。
 そのあと、ヒースがぽんとシュウの肩を叩いた。

 シュウが顔を上げると、真顔のヒースの顔が綻んでいた。

「オッケー牧場」
 
 
 
「おっやじーーーっ!! ただいマンゴスチーーーン!!」

 シュウ、カレンと共にハイテンションで帰宅。
 リュウがギルド長としての仕事をやっているだろう書斎に飛び込んだ。

 シュウの想像通り書斎にいたリュウが、椅子をくるりと回転させて振り返る。

「お? その様子じゃ、カレンの兄さんから合格もらったかシュウ」

「あたり前田のクラッカァァァァァァァァァっ!!」

「ついでに寒くなって帰ってきたか」

「親父もたまにはユーモア見せろよなっ♪ おススメするぜ、寒い言葉っ♪」

「いや、遠慮する」

 と、リュウ。
 シュウの傍らで苦笑しているカレンを見た。

「うちの息子ますますバカになっちまって苦労かけるな、カレン」

「いえ、リュウさま…。あたくしのお兄さまのせいみたいなものですし……」

「おまえ、いいんだよな?」

 と、確認したリュウの顔を、カレンは見つめた。
 何がいいのか訊かなくても分かる。

 シュウとの結婚だ。

「はい、リュウさま」

 と、頬を染めて微笑んだカレン。
 その顔を数秒の間じっと見つめたあと、リュウが椅子を回転させて背を向けた。

「そうか」

 と言って。
 中断していた仕事を再開しながら続ける。

「シュウ」

「ん?」

「おまえももう超一流ハンターだ」

「おう」

「3ヶ月分の報酬でいいエンゲージリング買ってやれよ」

「おうっ! もちろんだぜっ!」と、笑ったシュウ。「んじゃ親父、いい夢見ろよ! バイナラ♪」

 と言い残して、カレンと共に書斎を後にした。
 一方、袖をまくったリュウ。

「……今夜はずいぶんと冷えるぜ」

 ぶつぶつとトリハダが立っていた。
 袖を戻し、仕事を再開する。

(シュウ、カレンの家族全員から合格…か。よくやったぜ。あとはシュウがカレンにエンゲージリング渡して一応ちゃんと婚約すれば……)

 と、たまらずにやりと笑った。

(リン・ランファザコン化で『父上大好き♪』計画大成功だぜ!)
 
 
 
 
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