第106話 それぞれのバレンタイン 長男&カレン編


 バレンタインデーの夜。
 カレンがシュウへのバレンタインを持って、シュウの部屋へ行こうとしたときのこと。

 シュウの部屋の前で、リンとランが待っていた。

「カ、カカカ、カレンちゃん、コレを兄上にっ…!」

 と、顔を赤くしながら、カレンに小さな紙袋を渡したリン・ラン。

「あら? リンちゃんランちゃん、シュウにまだチョコ渡してなかったの?」

「チョコは渡したのだ、チョコはっ…」

「そう。チョコともう1つプレゼントがあったのね」

「カ、カレンちゃん」と、小声になってカレンに顔を近づけるリン・ラン。「きょ、今日それ穿いてもらってなのだ、兄上にっ…!」

「穿いて? 衣類なのね」

「ミラ姉上と一緒に買いに行ったのだが…、ちょっと父上とおそろいのパンツなのだっ!」

「ちょ、ちょっとリュウさまとおそろい?」

「兄上はトランクスバージョン、父上はTバックバージョンなのだっ…!」

「…そ、そう……」

「頼んだのだ、カレンちゃん! 絶対だぞ、カレンちゃん…! 絶対に兄上に穿いてもらってなのだカレンちゃんっ……!」

「わ、分かったわっ……!」

 リン・ランに押されながら承諾したカレン。
 リン・ランが自分たちの部屋へと戻っていくと、シュウの部屋へと入った。

 すると目に入ったのは、

「ヘイ!」

 と用意したらしいミニテーブルの上を手で叩いているシュウ。
 わくわくとした表情と、パタパタと振られている黒猫の尾っぽ。

「はーやーくっ!」

「はいはい」

 くすくすと笑ったカレン。
 シュウのところへと歩いていくと、ミニテーブルの上にシュウへのバレンタインであるチョコケーキの箱を置いた。

「はい、シュウ」

「おぉおぉお」と瞳を輝かせるシュウ。「すげえ、これケーキ?」

「ザッハトルテよ」

「ああ、あのチョコチョコしてるチョコケーキな! もしかして本命?」

「何よ、それ」とカレンが笑った。「もしかしなくても本命ですわ」

「だよな、サンキュ」

 ちょっと照れくさそうに笑ったシュウが、箱の蓋を開ける。
 そしてさらに輝く瞳。

「おぉおぉぉおお! すげー美味そうっ…!」

「一緒に食べましょ」

 と、カレンが一緒に持ってきた皿にケーキを切り分ける。
 シュウの分は大きめにして。

 シュウが1口食べて声をあげる。

「うめえぇぇぇぇええぇぇぇぇえっ! オレ生きてて良かったあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあっ!」

「大袈裟ねぇ」

 と呆れたように溜め息を吐いたカレン。
 だがその顔は嬉しそうに笑っている。

「あ…、ねえシュウ?」

「ん?」

「あたくしちょっと気になってることがあるのだけれど…」

 とカレンの笑顔が少し薄れた。

「ん、何?」

「その…、今日のバカップルコンテストが終わったとき、キャロルちゃんから何て言われたのかしら?」

「え?」と、ぱちぱちと瞬きをしたシュウ。「ああ、あのときな。あの子あんなおとなしそうな顔して、すげー冗談言うんだぜ?」

 と笑った。

「冗談って?」

「オレのこと好きだってさ」

「……」

 それ、絶対冗談じゃないわ。

 と心の中で突っ込んだカレン。
 シュウの鈍感さには呆れを通り越して尊敬してしまう。

 それと同時に、サラがキャロルに殴りかかった理由も分かった。

「サラがあの子の冗談も分からねーで右ストレート発射したときは、オレ一瞬すーげーヒヤっとしたぜ。レオ兄に感謝だな」

「……」

「ん? 何だカレン、オレの顔じっと見て」

「……。いえ、別に」

「?」

「あ、そうだったわ、シュウ」

 と話を逸らすカレン。
 リン・ランから渡された小さな紙袋をシュウに差し出す。

「はい、リンちゃんランちゃんからよ」

「リンとランから? 何だ、チョコ以外にもあったのか」

 紙袋の中を覗き込んだシュウ。

 折りたたまれたピンク色の布が目に入る。
 ウエストのゴムの部分から察した。

「トランクスか。…な、何でピンクを選んできたんだ、ピンクをっ…!」

 シュウは苦笑しながら、それを取り出した。

 広げて眉を寄せる。
 シュウが最初に見たのはトランクスの後面。

「何だ、これ…」

 両サイドに半円型の布がひらひらとついている。

 トランクスの前面を覗き込んで見たカレンが、突然声を上げた。

「きゃあ、可愛いっ!」

「はぁ?」

 とトランクスの前面を見たシュウ。
 驚愕。

「――なっ…、なんっじゃこりゃあああああああああああああっ!!」

 そこにはにこにこと笑っているゾウの顔。
 そして筒状に縫い付けられている鼻。
 両サイドにつけられている半円型の布の部分は耳だった。

「うふふ、こんなものがあるのね♪」

「よ、喜んでんじゃねーよおまえっ…! こんなの穿けねーぞオレはっ……!」

「今夜穿いて、シュウ(リンちゃんランちゃんと約束したし)」

「ばっ、おま…! ゾウの鼻パォォォォォンてなんぞ!? オレそんなバカなことしたくねえっ!」

「あら、可愛いじゃない? ピンクのゾウさん♪」と、カレンがゾウパンツを取り、広げて前面をシュウに見せる。「ね?」

「……」

 シュウ、困惑。

(よ…、喜んでいる…! オレの可愛いハニーが喜んでいる…! ここは思い切って穿いてゾウの鼻パォォォォォンでハニーを喜ばせるべきなのかオレ…!? い、いや何言ってんだオレっ…! そんなキャラになりたくねえっ…! いやしかし、オレのかぁーわいぃぃぃぃんカレンが望んでいるっ…! あああ、でもおぉぉぉおぉぉぉぉお!!)

 本気で悩んでしまうシュウ。

 カレンが言う。

「リュウさまにはミラちゃんが、これのTバックバージョンをプレゼントしたそうですわよ」

「お、親父がTバックのゾウパンツ…!?」想像して顔が引きつるシュウ。「…み、見たくねえっ…! マジ見たくねえっ…! そんな親父すーげー見たくねえ…! 母さんは裸リボンやらされてるし、マジすーげーバカップルっていう――」

 シュウははっとして言葉を切った。
 目を見開いてカレンを見る。

(はっ…裸リボン…! カレンの裸リボン……!?)

 想像して鼻血が噴出そうになるシュウ。

 カレンが眉を寄せた。

「顔を赤くしてどうしたのかしら、シュウ? エッチなことでも考えたのかしら」

「えっ? えと、そのっ……カ、カレン?」

「何かしら?」

「そ、その…、オ、オオオ、オレに何が何でもゾウパンツ穿かせたいっ?」

「え? ええ…、そうね(約束したから)」

「じゃ…、じゃじゃじゃ、じゃあさっ?」

「ええ」

「はははははははははは」

「何を笑ってるのかしら?」

「はははははははははは裸リボンやってくれたら、オレもゾウパンツ穿くっ…!」

「――!?」

 カレン、驚愕。
 のち、赤面。

「はぁっ!?」と、声が裏返るカレンの声。「な、何を言っているのかしらっ!? は、裸リボンですって!?」

「う、うんっ…!」と、シュウも赤面。「や、やってくれたらオレ、ゾウパンツ穿くからっ…!」

「え、ええ…!?」

「じゃ、じゃなきゃゾウパンツ穿かねっ…! ゾウの鼻パォォォォォンってやらねっ……!」

「そ、そんなっ…!」

 カレン、困惑。

(ああ、どうしましょう…! どうしましょう! リンちゃんランちゃんと約束したから、シュウには何が何でもゾウさんパンツを穿いてもらわなければなりませんわ…! で、でも、裸リボン…!? 裸になって身体にリボンを巻けですって……!? きゃああああああ! 恥ずかしいのですわああぁぁぁあああぁぁぁぁあっ!)

 真っ赤なカレンの顔を、真っ赤な顔をして見つめるシュウ。

「…い…嫌かっ? カレンっ……」

 そりゃ嫌だ。
 只ならぬ恥ずかしさなのだから。

 でも、

(あ、あたくしが裸リボンをやらなければ、シュウはゾウさんパンツを穿いてくれないのですわっ…! リンちゃんランちゃんとの約束を守れないのですわっ……!)

 覚悟を決めたカレン。
 シュウから顔を逸らし、小さな声で言う。

「…や…やるわっ……!」

「――エ…、エエェェェエエェェェエ!?」

 カレンの声を聞き取ったシュウ、驚愕。

(やってくれんの!? マジでやってくれんの!? は、ははは、裸リボン!? ウッソ、マジで!? 身体にリボン巻いて「あたくしを食べて(ハート)」!? …や、やべぇ…! ゾウパンツ穿く前だってのに、ちょっと鼻がパォォォォン……!)

 カレンが立ち上がった。

「…あ…あたくし、ちゃんと、は、裸にリボン巻くから、シュウもゾウさんパンツ穿いてちょうだいねっ……!」

 首を数回振って頷いたシュウ。
 カレンがシュウの部屋に備え付けてあるバスルームへと向かう。

「あ…、あたくしが先にシャワーを終えて、シュウがその後にシャワーを終えてちょうだい…、ゾウさん穿いて。あたくし、シュウがシャワーを終える間にリボンを巻き終えているからっ……!」

「ピ、ピピピピピピンクのリボン希望っすっ!!」

 と、シュウ。
 頷いて承諾したカレン。

  (ま…、まさかこんなことになるなんてっ…!)

 と、脱衣所に入りドアを閉め。
 火が吹きそうな顔を膝に埋める。

(裸リボンってことは、下着は身につけないのよね…? 裸の上にリボンってことよね!?)

 正直、死ぬほど恥ずかしい。
 だが、やらなければいけない。

(シャワーを終えたら、キラさまにリボンをもらいに行かなきゃ…)
 
 
 
 カレンとシャワーを交代したシュウ。

 バスルームの中で頭からシャワーを浴びている。
 2月だというのに、身も凍るような冷水を。

(落ち着け、落ち着けオレェェェ…!)

 まるで冷めそうにない顔の火照り。
 裸にリボンを巻いたカレンを想像するだけで、下半身に血が集中しかける。

(こ、こらっ…! まだパォォォォンすんじゃないよオマエっ……!)

 おまけに鼻から流血。

(た、頼むよ鼻の穴の毛細血管っ…! 頻繁に破れすぎだよオマエっ……!)

 苦笑しながら鼻に治癒魔法を掛けるシュウ。
 その頃のシュウの部屋の中には。

「兄上はシャワー中のようだな」

「うむ。カレンちゃんは父上と母上の部屋で何やら叫んでるぞ」

「今のうちなのだっ…!」

「うむ、今のうちに隠れるのだっ…!」

 リンとランがいた。
 首からデジ一眼レフカメラをぶら下げて。

 シュウの部屋の中をきょろきょろと見回し。

 リンはクローゼットの中へ。
 ランはトイレの中へ。

 扉をちょっと開けて隙間を作ったら。

(隠し撮りの準備完了! なのだっ♪)
 
 
 
 脱衣所へと出て身体を拭いたシュウ。
 ゾウパンツを顔の前で広げて見つめる。

「……頑張るんだ、オレ」

 と、苦笑しながらゾウパンツを身につけ、鏡で己の姿を確認。
 結構な衝撃を受けた。

「ちょ…、ちょっと似合うぜオレっ…! 親父だと絶対似合わねえのに何故だ…! 同じ顔なのにっ……!」

 と、いつまでも己の姿に目を疑っている場合ではない。

(おっと、カレンもう準備できて待ってるかなっ…)

 いきなりゾウパンツで出るのは恥ずかしいので、その上にタオルを巻き。

(ははははははは裸リボンっ…!)

 ドキドキとしながら脱衣所から出たシュウ。
 それと同時に、シュウの部屋へと戻ってきたカレン。

「あっ」

 と声をそろえた。

 シュウ、早速鼻から流血。
 カレンはキャミソールワンピース型の寝巻きを身につけているのだが、その下に巻いているピンクのリボンが胸元から少し見えている。

(ま、ままま、巻いてるっ…! リボン巻いてるっ…! マジで巻いてるっ……!)

 鼻を手で押さえて治癒魔法をかけるシュウ。
 驚いたカレンが訊く。

「ちょ…、だ、大丈夫? シュウ…」

 シュウはうんうんと頷いて返事をし、部屋の中央へと向かって歩いて行った。
 カレンも部屋の中央の方へと歩いていく。

 1mほど距離を置いて向かい合い。

 赤面。

「…っ…ゾ…ゾウさん穿いてるのっ…?」

「…はっ…穿いてるっ…」

「…そ、そうっ…。あ…あたくしも、そのっ…リボン巻……かれてきたっ…」

「ま、巻かれっ…? か、母さんにっ…?」

「え、ええっ…」

「そ、そかっ…」

「え、ええっ…」

「……」

「……」

 途切れた会話。

 10秒ほどして、シュウは再び口を開いた。

「ど、どうする?」

「ど、どうしましょう?」

「さ、最初背中向け合ってるっ?」

「え、ええ、そうしましょうっ…」

「ん、んで、せーので向き合うかっ…」

「え、ええ、そうねっ…」

 と、いうわけで。

 背を向け合うシュウとカレン。

 シュウは腰のタオルを外してゾウパンツ一丁になり。
 カレンは寝巻きを脱いで裸リボン姿になり。

「い…、いい? カレンっ…」

「え…、ええ、シュウっ…」

「そ、それじゃあ…」

「そ、それじゃあ…」

 覚悟を決め、

「せっ、せーのっ!」

 クルっ!

 と、向き合った。
 シュウのゾウパンツに目をやり、笑ったカレン。

「きゃあ、可愛いので――」

 ブハっ!!

 と、カレンの言葉を遮ったシュウの鼻血。
 あまりにも勢い良く噴射したものだから、カレンが仰天して声をあげる。

「きゃっ、きゃああああああ! ちょ、シュウ!? 大丈夫!?」

「……っ……!!!」

 鼻を両手で押さえながら首を横にぶんぶんと振るシュウ。
 まるで大丈夫じゃない。

(ちょ、待っ、助けっ……!)

 目がこれ以上開かないというくらいにまで開いて、裸リボン姿のカレンを凝視する。

(カっ、カレンおまえエロすぎるだろっ……!!)

 治癒魔法を掛けまくっているのに、垂れまくってくる鼻血。
 そして反応し始めるゾウの鼻。

 パ…

(やべっ…! これ以上カレン見てらんねえっ……!)

 とカレンに背を向けるシュウ。

 それと同時に、

(待ってましたなのだああああああああっ!)

 リン・ランがデジ一眼レフカメラのピントをシュウに合わせた。

 相変わらず両手で鼻に治癒魔法をかけまくりながら、ゾウの鼻に目を落とすシュウ。
 ゾウの鼻がむくむくと起き上がってくる。

 パォ…

(あ…あああ…! や、やめてくれっ…! やっぱこんなバカすぎんの見られたくねえっ…!)

 パォォ…

(た、頼むカレンっ…!)

 パォォォ…

(み、見ないでくれっ……!!)

 と、願ったのに。

「シュウ、大丈夫!?」

 カレンがシュウの前へと回ってきた。
 次の瞬間。

「――!!?」

 パォォォォォォォン!!

 と、ゾウの鼻が完全に起き上がってしまい。

(ぎっ、ぎゃあああああああああああああああっ!!)

 シュウ、心の中で絶叫。

「まあ、ゾウさんが」

 とカレンの目が丸くなると同時に、

(キタァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!)

 カシャシャシャシャシャ!!

 リン・ランに切られまくったカメラのシャッター。
 その音に驚愕して、シュウは部屋の中を目を白黒とさせて見た。

「なっ、なんだ!? 誰だ!?」

「まずいっ! ずらかるのだっ!」

 と、リン・ランの声。

「リっ…、リン・ラン!?」

 とシュウが声を裏返した次の瞬間。
 リンはクローゼットから、ランはトイレから飛び出し、

「おっ、おまっ…、おまえらあああああああああああああああっ!!」

 と首まで赤面しながら寄って来たシュウの腕を間一髪のところで避け。
 シュウの部屋から逃げ出した。

「コラ待てっ!! 待てって言ってんだろおまえらああああああああああっ!!」

 とリン・ランに続き、部屋を飛び出したシュウ。
 ちょうどサラの部屋から出て来た、サラ・レオンと鉢合わせ。

「――!?」

 目を真ん丸くしてシュウのゾウパンツを見つめるサラとレオン。
 シュウ、これ以上でないくらいの声で絶叫。

「――ぎっ…、ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!!」

 慌てて自分の部屋に飛び込み、さらにベッドの中に潜り込む。
 廊下から聞こえてくるサラの爆笑。

「あーーーっはっはっはっはっはっ!! あっ、兄貴っ…!! 兄貴サイコーっ!! アタシの兄貴サイコーーーーーっ!! あーーーっはっはっはっはっはっはっ!! おっ、お腹がっ…!! もっ、もうダメっ!! 死ぬっ……!!」

 ベッドの中、シュウは必死に耳を塞ぐ
 あまりの恥ずかしさに泣きそうになる。

「黙れっ!! 黙れサラァァァァァァァァァっ!! 見なかったことにしてくれえぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇええっ!! オレはゾウパンツなんか穿いてないっ!! ゾウの鼻パォォォォンなんてしてないんだああぁぁぁああぁぁぁああぁぁあっ!!」

 カレン、苦笑。
 廊下に顔だけ出し、

「サラ、笑っちゃダメよ」

 と言ってシュウの部屋に鍵を閉めた。
 頭まで布団を被っているシュウに近寄る。

「な、泣かないで、シュウ。ゾウさん可愛かったわよ?」

「単なるバカだったじゃねーかよっ!!」

「そ、そんなことないわ」

「嘘だっ! もうオレを見るなっ…! 見ないでくれえぇぇぇええぇぇえぇえっ!!」

「見るわよ」

 と溜め息を吐き、シュウに続いてカレンがベッドに潜り込んだ。

「みっ、見るなって言ってんだろっ!? じっ、自分の部屋に戻れよおまえっ!」

「嫌よ。裸リボンまでやらせておいて戻れって何かしら」

「戻れったら戻れっ! 戻れ戻れ戻れっ!」

「ふざけないでっ!」

 頭まで被った布団の中で、喧嘩を始めるシュウとカレン。

「戻れったら戻れよっ! あああああ、もうっ…! エ、エロすぎるわおまえっ……!!」

「ちょっと、背を向けないでちょうだいっ! 失礼なのですわっ!」

「向けるわっ! 萎えてきた鼻がまたパォォォォンてなるじゃねーかよっ!」

「カっ…、カモオォォォンだからいいのですわっ…! カっ…カモオォォォンったらカモオォォォンなのですわっ……!」

「そっ、そんなに誘うな今日はっ…! ――って、こ、こらっ! おまっ、引っ付くなっ!」

「レディをこんな姿にさせておいて放置なんて許さないのですわっ!」

「だ、だって…! ――って、わああああああっ! えっ!? ちょっ、ウソっ…! おまっ…、えぇっ…!? ばっ、マジやめっ…! やめてくださっ…! おっ、お嬢さんっ…! あわわ、そんなっ…! エエェェエエエェェエっ……!?」

 その喧嘩。

 パォォォォォォォン!!

 カレンが勝利した。

「ヘイ、カモオォォォォン」

「うす……」
 
 
 
 その頃。
 文月島文月町にあるゲール一家宅。

「ねえ、パパ」

「…なんだい、キャロル…」

「今日のバカップルコンテストで、嘘を吐いてごめんなさい」

「…ああ…、気にしてないよ…」

「あのね、パパ。キャロルお願いがあるの」

「…なんだい…?」

「来週の週末、葉月島へ行って来ていいかな」

「…うーん…、離れたところとなるとケリーが心配するから駄目じゃ――」

 バリっ!

 と、ゲールの言葉を遮ったキャロルの爪。

「いいよね? パぁパ♪」

「…ゆ、許しちゃうっ…!」

「ありがと♪ これで彼は」と、不敵な笑みを浮かべたキャロル。「わたしのもの……!」

 バリっ!

 とゲールの顔面にもう一撃をプレゼントした。

「…たっ、たまらんっ…!」
 
 
 
 
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